日本学術会議「幹事会だより No.98」について

 

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.98
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                                平成25年10月24日発行

                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は10月2日(水)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを
受け、9月24日(火)に開催されました第178回幹事会の議事の概要を御報告いたし
ます。

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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 前回幹事会は総会期間中に開催されました。そこで、今回は総会での自由討議で議論さ
れた会員・連携会員の選考に触れます。もちろん、この点についてより詳しくは今後の会
員・連携会員の皆様にお知らせする機会があるので、ここでは総会時の議論に関して、早
い機会に補足するために1点だけを取り上げます。
  総会時に、日本学術会議協力学術研究団体(日本学術会議から称号を付与された学協会
等、以下「学術団体」)から、選考に関わって提供された情報をどのように取り扱うのか
という趣旨のご質問がありました。これについて、
(1)個人情報を含むので、選考委員会や同分科会委員、担当事務局に限り利用します。
(2)会則第8条第2項の規定(「前項の委員会(選考委員会)は、前項の推薦その他の
情報に基づき、会員及び連携会員の候補者の名簿を作成し、幹事会に提出する」)によっ
て、会員・連携会員の選考には、学術団体からの情報も活用します。つまり、学術団体か
らの情報のみに基づいて候補者として名簿に記載する場合もあり得ます。
の2点が補足しておきたい内容です。会員・連携会員の選考は、審議を踏まえた対外発
信活動と並んで、これから1年間の重要な作業の一つになります。コ・オプテ―ションの
内容を豊かにしていくために、皆様のご協力をお願いします。


〔 組織運営・科学者間の連携担当副会長 小林良彰 〕  
 秋の総会における日本学術会議会則改正で「学術会議に、若手科学者の連携を図り、そ
の活動を通じて学術の振興に寄与することを目的として、会員又は連携会員をもって組織
する若手アカデミーを置く」と明記され、さらに提言と報告の発出主体として従来の「
部、委員会または分科会」に加えて若手アカデミーも発出主体に加わることになりまし
た。
  この若手アカデミーについては、前期の提言で発足が要請され、前期及び今期で45歳
以下の連携会員と数名のシニア会員・連携会員から構成される若手アカデミー委員会が設
置され、「若手科学者の視点を活かした提言活動、産業界、行政、NPOとの連携、科学
コミュニケーションの推進、Global Young Academy の活動への参画とともに、若手科学
者の意見収集と、それを踏まえた当事者の立場からの問題提起、学協会等の若手科学者団
体や異なった諸分野の若手科学者間の交流とその機会の提供、各国若手アカデミーとの連
携など」の活動を行っております。来期においては、今回の会則改正に伴い、これまでの
「若手アカデミー委員会」から「若手アカデミー」に発展することになり、若手会員・連
携会員による積極的な提言や報告が作成・発出されることを期待しております。
  なお、現在の若手アカデミー委員会では、海外の若手アカデミーと連携して国際活動を
行ったり、国内の学協会・若手の会・代表者と連携して国内若手研究者ネットワークを構
築し、これまでに82の若手の会が参加しています、さらに、若手アカデミー委員会若手
研究者ネットワーク分科会は、今般の改正労働契約法に関する緊急アンケートを実施して
1853件の回答を得た(平成25年10月15日現在)調査結果を取りまとめるなど、
精力的な活動を行っております。
  こうした若手研究者による活動は、日本学術会議の将来を支える重要な柱となるもので
あり、今後とも会員・連携会員の皆様によるご支援とご協力をお願いする次第です。


〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
 10月9日・10日の2日にわたって「巨大複合災害(地震・津波・原子力発電所事故
)-影響波及と対策、および将来に向けての政策選択」をテーマとする国際会議が開催さ
れました。学術会議がIAC、IAP、ICSU、国連大学との共催で開催している「持
続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議」の第11回にあたるこの会議では、
東日本大震災/福島第一原発事故から2年半が経過した時点で、巨大複合災害からの復興
状況や諸課題を俯瞰するとともに、将来への教訓を共有するための議論が行われました。
IAC共同議長のRobert Dijkgraaf先生による“Science, Academies, and Society”、
福島第一原発の民間事故調査委員長を務められた北澤宏一先生による“What should be
the criteria to discuss the safety of nuclear energy?”という2つの基調講演と、
ICSU会長のYuan Tseh Lee先生の特別講演”Disaster Risks and Social
Transformation”のほか、4つのテーマ別セッションが開かれました。「生物生産地域へ
の影響と復興への取組み」と題したセッション1では、津波被災地区の環境・生態系の変
化と、その農業・水産業への影響、風評被害も含む放射能汚染への取り組みなどが議論さ
れました。「住民と労働者の放射線被ばく防護と健康管理」と題したセッション2では、
福島地区の住民および原発事故収拾作業に従事する労働者の被ばく防護と健康管理に関す
る課題が議論されました。「原子力発電所事故および放射能汚染の調査と分析」と題した
セッション3では、東京電力、フランス科学アカデミー、米国科学アカデミーによるそれ
ぞれの福島原発事故の調査報告に続いて、福島地区の放射能汚染マップや住民を対象とし
た体内/対外被ばく状況の調査結果の報告がありました。「原子炉の廃止・廃炉と今後の
原子力利用」と題したセッション4では、福島第一原発の廃炉工程に関して東京電力か
ら、廃炉および安全性向上に関わる材料工学的課題および将来の原子力利用に関するフラ
ンスの取り組みが紹介されました。総合討論では各国アカデミーからの参加者も交えて活
発な意見交換が行われ、巨大複合災害からの復興や原子力利用に関する国民の選択を論じ
る上の基盤となる俯瞰的知見を共有できた会議だったと思います。会員・連携会員の参加
者が多くなかったことが惜しまれますが、この会議の貴重な資料が学術会議内外の議論に
幅広く活用できるようにしたいと考え、その方法を検討しているところです。


〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
 総会直後から、京都で開かれた科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフ
ォーラム)に参加してきました。STSフォーラムは、尾身幸次氏のご尽力により、世界の
著名な科学者、政治家、企業家などが集まって議論を交わす国際会議で、今年10回目を
迎えました。今年のテーマは「科学技術の光と影」でした。多くの会員、連携会員も参加
され、各セッションでの議論に貢献されました。最終日には、大西会長がセッションのま
とめを発表されました。
  またこの機会に、日本学術会議としてのアカデミー外交も行いました。一つは、欧州議
会科学技術選択評価委員会副委員長ならびに駐日欧州連合代表部との懇談です。もう一つ
は「アカデミー会長会合」です。STSフォーラムに多くのアカデミー会長も参加されるこ
とから、日本学術会議は「アカデミー会長会合」を主催してきました。今年も、大西会長
とイスラエル科学アカデミーのルース・アーノン会長を共同座長として、主に若手研究者
の育成や支援について意見や情報を交わしました。若手アカデミー委員会の駒井委員長、
狩野副委員長にもご参加いただき、若手としての生の声も加えていただきました。さらに
この会合の出席者の一部には、その後東京に移動していただき、家副会長からご紹介いた
だいている「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議」にもご参加いただき
ました。国際会議を連続して支えてくださった事務局の皆様にも感謝いたします。


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以下、第178回幹事会の概要となります。

◎第178回幹事会(平成25年9月24日(火)13:45~16:10)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 東日本大震災復興支援委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び分科会委員を
決定しました。
○新規設置
・汚染水問題対応検討分科会
(2) 科学研究における健全性の向上に関する検討委員会における分科会委員を決定しまし
た。
(3) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置3件、設置期限の延長1件)及び分科会
等委員(2分科会、1小委員会)を決定しました。
○新規設置
・経営学委員会 経営学大学院教育のあり方検討分科会
(「経営学委員会 経営学大学院における質保証検討分科会」から名称を変更することを
条件に承認)
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 計算科学シミュレーションと工学設計分科会
設計とシミュレーションを結びつける小委員会
・電気電子工学委員会 電気電子工学分野の参照基準検討分科会
○設置期限の延長
・基礎生物学委員会・統合生物学委員会合同 生物学分野の参照基準検討分科会
(4) 日本学術会議会則の一部を改正する規則について総会の議決を求めることを決定しま
した。
(5) 日本学術会議の運営に関する内規等の一部を改正することを決定しました。
(6) 「メール審議の実施について」を決定し、また関連する規定を改正することを決定し
ました。
(7) 回答「国際リニアコライダー計画に関する所見」について、国際リニアコライダー計
画に関する検討委員会の家委員長より説明があり、審議の結果、承認しました。
(8) 提言「研究用原子炉のあり方について」について、基礎医学委員会・総合工学委員会
合同放射線・放射能の利用に伴う課題検討分科会の柴田委員長より説明があり、審議の結
果、所要の修文を条件に承認しました。
(9) 第5回ICSU地域コンサルテーション会合「アジア・太平洋地域におけるフューチ
ャー・アース」に会員等を派遣することを決定しました。
(10) 日本学術会議協力学術研究団体の指定(4団体)を承認しました。
(11) 11件のシンポジウム等の開催、1件の国際会議及び2件の国内会議の後援を決定
しました。
4 その他事項として、今後の幹事会開催日程について確認しました。
5 以下の非公開審議が行われました。
(1) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)及び小委員会委員を決定しまし
た。
  特段の事情を考慮し、地球惑星科学委員会IUGS分科会に、複数名の特任連携会員
を決定しました。
(既に審議のために認められている特任連携会員1名に加え、国際対応分科会として、
IUGS理事である人材1名が不可欠であるため。)
(2) 外部委員候補者の推薦を決定しました。
(3) 日本学術会議の活動状況等に関する年次報告(平成24年10月~平成25年9月)を
決定しました。
6 その他事項として、第165回総会の日程及び報告事項について確認が行われまし
た。また、大西会長から平成26年10月の会員及び連携会員の改選について説明があ
りました。