日本学術会議「幹事会だより No.100」について

 

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.100
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                                平成25年11月29日発行

                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は11月22日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたこと
を受け、10月25日(金)に開催されました第182回幹事会の議事の概要を御報告い
たします。

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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 10月末に、オーストラリアのキャンベラで、IAP(Global Network of Science
Academies)の執行委員会が開催されました。今年の3月にリオで開催された総会で、3年
ぶりに執行委員国に選出されたので、春日副会長、佐藤国際担当参事官とともに、参加し
たのです。IAPはICSUと並ぶ各国の科学アカデミーが参加する国際組織です。2日間にわ
たる執行委員会は、議題が盛り沢山で、お蔭で、初めての参加ながらIAPの活動の仕組み
がよく理解できました。重要な議題は二つ。
  一つは、財源問題です。後発のIAP(1993年発足)は実は会費制をとっておらず、事務局
をはじめとする活動を支えているのはイタリア政府の毎年の拠出金です。財政や経済が順
調とは言えないと報道されるイタリアの学術界での貢献は、文字通り敬意を表するに値し
ます。加えて、主要アカデミーが国際プロジェクト等を委託することによって、活動が維
持されているのです。執行委員国になった日本のアカデミーとしてどういう形でIAPに貢
献できるのか、宿題を貰った気になりました。
  もう一つの重要テーマは、IAP、IACとIAMPという関係国際組織の統合問題でした。IAC
は調査・提言活動を行う組織で、こちらも日本学術会議は理事を務めています。IAMPは
医学関係の国際アカデミー組織で、日本学術会議はその設立に大いに関わった経緯があり
ます。これらは互いに密接な連絡を取りながらも別々に行動してきており、国際社会に向
けてよりインパクトを与える活動を行うために一つの傘の下で活動しようという議論が進
んできたのです。その背景には、いずれの組織も会費制という安定した財政基盤を持たな
いので、統合によって存在感を強め、併せて財政基盤も強化しようという狙いがありま
す。
  国際的な科学アカデミーの運営という、日本学術会議にとってはこれまであまり手がけ
てこなかった分野にも今後は挑戦する必要が出てくるでしょう。その折には、各国の主張
と貢献をどうバランスさせて、国際世論をまとめていくのかが問われます。IAPでの二つ
のテーマをめぐる議論を生かす場面が今後も出てきそうです。


〔 組織運営・科学者間の連携担当副会長 小林良彰 〕  
 日本学術会議は、研究者が主体的かつ自律的に科学研究を進めるために、社会の信頼と
負託を得て科学の健全な発達を進めなければなりません。このため、第18 期の対外報告
「科学における不正行為とその防止について」では、社会に対する重大な責任として研究
不正防止を主張し、第19期では、国内の学会の倫理に対する取り組みについてアンケー
ト調査を行い、行動規範を有する学会や常設の倫理委員会を設置している学会がきわめて
少数である現状を明らかにしました。また、第20期では、すべての学術分野に共通する
基本的な規範である声明「科学者の行動規範について」を公表しました。
  しかし、その後もデータのねつ造や論文盗用といった研究活動における不正行為の事案
が発生し、また東日本大震災を契機として研究者の責任の問題がクローズアップされまし
た。これらのことから、第22期の改革検証委員会学術と社会及び政府との関係改革検証分
科会で、声明「科学者の行動規範-改訂版-」を作成・発出し、さらに科学研究における
健全性の向上に関する検討委員会で、「科学研究における健全性の向上のための方策」に
関する提言をとりまとめているところです。これらの活動を通じて、日本学術会議が世界
有数の科学研究の健全化を目指して研究者コミュニティを先導するという決意を社会に対
して示していかなければならないと考えております。


〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
 11月9日(土)、10日(日)の2日間にわたって、科学技術振興機構(JST) 科学コミュニ
ケーションセンター主催、日本学術会議ほか共催の「サイエンスアゴラ2013」が東京お台
場地区の日本科学未来館を中心とした会場で開催されました。サイエンスアゴラは、市民
との科学コミュニケーション活動に取り組む人々が工夫を凝らした展示などを持ち寄り、
市民・青少年とともにサイエンスを楽しむ科学交流イベントです。日本学術会議も、科学
と社会委員会科学力増進分科会を中心として毎回企画を練って参加しています。今回は5
つの公開シンポジウムを主催しました。同時進行のものや別会場で開催されたものもあっ
たため、全部に出席することはできませんでしたが、3つの公開シンポジウムに参加して
きました。
・シンポジウム「若者に発信する日本学術会議:<知の航海>シリーズから」では、日本
学術会議が企画し岩波ジュニア新書から出版されている「知の航海シリーズ」の既刊書か
ら、「さとやま」(鷲谷いづみ)、「ロボット創造学入門」(広瀬茂男)、「理系女子(リケジョ
)的生き方のススメ」(美馬のゆり)、の各著者から執筆の意図や若者に対するメッセージ
も含めた講演がありました。
・シンポジウム「科学・技術でわかること、わからないことPart3」では、東日本大震災
のような大規模災害や、笹子トンネル天井の崩落事故のような高度成長期に集中整備され
てきた我が国のインフラの老朽化に伴うリスクに関する分析と対策が議論されました。
・シンポジウム「高校で学ぶべき『サイエンス』とは?」では、我が国の中等教育におけ
る理科教育が抱える課題とその解決に向けて、教育現場の関係者や文系の学生からの声を
交えて、科学技術立国として必要な科学力や国民の社会選択に必須のサイエンスリテラシ
ーについて多角的に議論が行われました。
  いずれもたいへん充実した内容のシンポジウムで私自身は大いに楽しめましたが、全部
で230あまりの企画が並ぶサイエンスアゴラのお祭り的雰囲気の中では真面目で地味なイ
ベントである印象は否めず、講演会場が7階の奥の方であったこともあって一般の参加者
が期待したほどでなかったのが勿体なく思われました。企画や事前宣伝のあり方なども含
めて今後の参加のあり方を工夫する必要があると感じました。


〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
 世界科学会議(ICSU)他が中心となって進めているフューチャー・アースに対し、日本学
術会議も積極的に関わっていることをこれまでもお伝えしてきましたが、この秋から、フ
ューチャーアースの国際事務局をどこに設置するかの議論と手続が始まっています。日本
をはじめ10ほどの団体が本部事務局を、やはり日本を含む15以上の団体が地域事務局を
引き受けることに関心を表明し、11月中旬にパリに集まって招致合戦の会議を開きまし
た。いえ、開いたはずでした。ところが各団体5分ずつのプレゼンテーションを行った後、
参加者はお互いの提案に感心し、その多くを競争の敗者として排除することの無駄を悟っ
たのです。そこで会議は競争ではなく協力のあり方を探る方向に転換しました。会議の結
論としては、本部も地域も区別なく、世界に事務局機能を分散させた形で持つこととなり
ました。この形態が機能的、財政的、実務的に現実化できるかどうか、当面実行可能性を
確認している段階で、具体的な役割分担の議論はこれからになります。しかし、このユニ
ークな事務局形態は、フューチャーアースの理念にも合致するものと思いますので、学術
会議としてもその実現のために、各国ならびに国内の関係者と協力して最大の努力をした
いと思っています。
  この原稿を書いている現在、リオデジャネイロで開かれている世界科学フォーラム(
World Science Forum)に出席しています。次回はこちらのご報告をしたいと思います。



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 以下、第182回幹事会の概要となります。

◎第182回幹事会(平成25年10月25日(金)13:30~15:00)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 平成26年10月の会員及び連携会員の改選に係る基本的事項を決定しました。
(2) 会員候補者・連携会員候補者の推薦書様式を決定しました。
(3) 選考委員会運営要綱の一部改正を決定しました。
(4) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置3件)及び分科会等委員(1委員会、2分
科会、1小委員会)を決定しました。
○新規設置
・心理学・教育学委員会 教育のガバナンス分科会
・心理学・教育学委員会 教育学分野の参照基準検討分科会
・土木工学・建築学委員会 地球環境の変化に伴う風水害・土砂災害への対応分科会 佐賀
低平地への適応策実装検討小委員会
(5) “Future Earth Bidders Conference”に会員を派遣することを決定しました。
(6) “Joint meeting of Advisory Group members”会議に会員を派遣することを決定し
ました。
(7) 12件のシンポジウム等の開催、1件の国内会議の後援を決定しました。
4 その他事項として、小林副会長から科学者委員会分科会等の活動状況について、春日
副会長からイスラエルとの二国間協定について、それぞれ報告がありました。また、来年
度の総会・幹事会の日程について決定しました。
5 以下の非公開審議が行われました。
(1) 東日本大震災復興支援委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)及び小委員会委員を決定しまし
た。 
(3) 科学者からの自律的な科学情報の発信の在り方検討委員会における委員(特任連携会
員)を決定しました。
6 その他事項として、小林副会長から科学者委員会の活動状況について報告がありまし
た。

 

◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  ○第166回総会(第22期・第6回) 平成26年4月10日(木)~12日(土)
  ○第167回総会(第22期・第7回) 平成26年7月11日(金)
  ○第168回総会(第23期・第1回) 平成26年10月1日(水)~3日(金)

  ※第167回総会は、第23-24期会員選考のための臨時総会です。