我国の微生物学の現状
微生物をより深く理解することは、我々の文化としてばかりでなく人類の将来にとって大変重要なことである。ウイルス、細菌、真菌、原虫などの微生物の研究領域は、生物多様性、環境保全、バイオテクノロジー、新興再興感染症、バイオテロなど、関連し合う多くの研究領域を包含している。微生物は、先端生命科学研究の対象として重要であるばかりでなく、地球環境維持等、人類の未来にとっても、非常に重要な必須の存在である。実際に、微生物を包括的に研究することの意義は近年益々高まっている。
しかるに、我国微生物学の研究の現状は、理学的な微生物遺伝学研究、農学・工学的な環境保全微生物学を含むバイオテクノロジー研究、医学・獣医学的な感染症研究やバイオテロ対策、さらに植物への微生物感染に関しては植物病理学というように、異なる学会の場で個々に議論されるようになっており、微生物学の全体像を把握することは困難な状態である。ここで、分散状態にある微生物学を包括し、俯瞰できる連携組織の構築が望まれる。とくにバイオリソースの立場を考慮すると連携の必要性は明らかである。
国際的には、国際微生物学連合(International Union of Microbiological Societies; IUMS)が設立され活動している。我国では、日本学術会議IUMS分科会及び総合微生物科学分科会がこれに対応しているが、研究分野の広がりが不十分である。日本学術会議と強い連携を保ち、また独自に我国の微生物学関連分野の発展を図るため、微生物学関連学会による連携組織が必要である。

日本微生物学連盟設立
日本学術会議の総合微生物科学分科会(基礎生物学委員会・応用生物学委員会・農学基礎委員会合同)とIUMS分科会(基礎生物学委員会・農学基礎委員会・生産農学委員会・基礎医学委員会・臨床医学委員会合同)は、合同で分科会を開催し、上記の微生物学関連の学術団体の連携を検討してきた。 その結果、両分科会は、平成19年2月7日、日本微生物学連盟(Federation of Microbiological Societies of Japan: FMS Japan)を設立した。立ち上げメンバーは、冨田房男、篠田純男、今中忠行、光山正雄、野本明男、堀井俊宏である。
当面はこの立ち上げメンバーで種々の検討を行ない、必要に応じて理事会の開催、各種委員会の設置などを行なうとともに、将来は総会、評議員会などの組織化を検討する方針である。なお、当連盟の代表者を野本明男(日本学術会議両分科会委員長)に決定した。

日本微生物学連盟構想
1.設立の目的
日本学術会議、IUMS分科会及び総合微生物科学分科会と協力し、以下の活動を行う。
(1) 我国の微生物学関連学術団体の連携強化と微生物学分野全般に関わる研究及び教育の推進を図り、社会活動を通して我国におけるこの分野の発展に貢献する。
(2)我国の微生物学分野の研究成果の世界に向けての発信に努める。
(3) 国際微生物学連合(IUMS)における我国の微生物学関連組織として国際交流に努める。
(4) その他。

2.会員構成と財政基盤
(1)当面は団体会員(微生物学関連の学会・協会等の学術団体と賛助会員)のみとし、個人会員制度については今後検討する。
(2)登録団体は、代表一名を選出して派遣するとともに、必要に応じて各種委員会委員を派遣する。
(3)財政は構成団体の分担金と企業等からの協賛金の他、賛助会員(団体及び個人)からの賛助会費とし、将来は出版やセミナー開催等の事業収入を加える。なお各学術団体からの分担金は、団体の規模に応じて1万円から10万円程度とする。

3.学会の加入状況
微生物学関連の各学術団体に連絡し、加入を依頼した。以下の18の学術団体の賛同を得ることが出来た(平成20年4月21日現在)。
日本ウイルス学会、日本細菌学会、日本医真菌学会、日本乳酸菌学会、日本植物病理学会、日本きのこ学会、日本菌学会、日本微生物資源学会、日本食品微生物学会、日本防菌防黴学会、日本感染症学会、日本寄生虫学会、日本生物工学会、 応用微生物学研究協議会、日本放線菌学会、日本微生物生態学会、日本エイズ学会、 日本醸造学会

4.当面の活動方針
当面加入を予定している各学術団体からの分担金を使用し、ホームページを立ち上げ、広報活動を開始するとともに、各学術団体との連絡網を整備し、日本学術会議ならびにIUMSからの情報を微生物学関連学術団体へ周知できるようにする。
今後、加入学会の代表理事が会合し、連盟の詳細な構想や運営方法を検討していくこととなるが、日本学術会議と協力し、IUMS2008(イスタンブール)開催協力、IUMS2011(札幌)開催準備を行なうことも、当面の重要な活動である。


日本微生物学連盟の事務局を以下におく:

日本微生物学連盟
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