日本学術会議「幹事会だより No.103」について

 

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.103
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                                平成26年3月10日発行

                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は2月28日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを
受け、1月31日(金)に開催されました第187回幹事会の議事の概要を御報告いたし
ます。

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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 3月11日が近づくにつれ、震災を振り返ったり、復興の現状を評価したりする報道が増
えています。これらによって、震災の強烈な記憶が再び甦ってきます。東日本大震災の時
点で私はまだ会員ではなかったのですが、当時の活動の記録を読めば、3月11日を境に、
日本学術会議の活動が大きく変化し、連日のように復旧復興や原発事故対策について論ず
るための会合が開催され、緊急提言やイベントが行われたことが分かります。ただ、同時
に、日本学術会議法に「政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又
は説明をすることができる」とありながらも、残念ながらこのことが十分には行われませ
んでした。また、日本学術会議が入手できる情報が限定されたものであり、科学者として
の見解を十分に検討することができたのかには疑問があるとされます。
  去る2月28日の幹事会では、「緊急事態における日本学術会議の活動に関する指針」を
決定しました。これによって、東日本大震災の時のような、緊急で、しかも科学者の見解
が必要とされる事態に際して、日本学術会議が自らとるべき態勢を示すことができたと思
います。もちろん、指針を定めておけばよいということではありませんから、指針を基
に、想定される緊急事態に関連の深そうな学協会、政府機関等との連携を日頃から図って
いくことが重要となります。指針は、「会長談話」の形で広く公表しました。これを踏ま
えて、緊急事態に備えた活動も強化していきたいと思います。


〔 組織運営・科学者間の連携担当副会長 小林良彰 〕  
 学術会議は前期(21期)の終盤に「報告『日本学術会議の機能強化について』」を作成
し、今期(22期)に引き継ぐ事項をとりまとめました。それから2年半が経ち、振り返っ
て検証してみると、多くの事項が達成済み、あるいは着手済みとなっています。その一方
で、幾つかの事項については、今期の残り半年で着手しなければならないことが残されて
います。その一つが地区会議との連携強化であり、各地区会議の代表幹事の方と執行部の
懇談の場を設けることができればと願っております。各地区会議ともに会員や連携会員が
十分にいない中でも精力的に活動して頂いており、その方々の意見を学術会議に反映させ
るパイプをこれまで以上に構築する必要があると感じております。また、学術会議の懸案
事項である広報体制の強化についても、前期で広報担当会長補佐を置くことが申し送られ
たものの、予算や人材などの点から実現に至っていません。折角、時間をかけて作成した
良い提言を実現するためにも、社会の理解を得る必要がありますので、より効果的な広報
の在り方を検討する必要があると思います。これらを含めた来期(23期)に引き継ぐべき
事項について、学術会議の会員・連携会員の方々と検討していくことができればと考えて
おります。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
 学術会議では毎年暮れに、前年の10月からその年の9月までの1年間の活動状況をまと
めた年次報告書を作成し公表しています。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/nenji/index.html
  年次報告書は学術会議の活動に対する外部評価の資料ともなっています。去る2月19日
に、平成23年10月から24年9月までの1年間の活動に対する外部評価が行われました。外
部評価委員からは数々の有益なご助言をいただきましたが、その中でも印象に残ったの
は「多大な労力をかけて作成した提言等があまり活かされていないのではないか」との
耳の痛いご指摘でした。提言等の施策への反映の現状については、(私自身も含めて)
同様の感覚を持たれている会員・連携会員が少なくないのではないかと思います。学術
会議では提言等の公表から1年程度を目途にフォローアップのインパクト・レポートを
作成しています。
  学術会議の提言が施策に採り上げられるかどうかは予算等の状況も含めた諸般の事情に
よることですし、政府が(学術会議の意見も考慮した上で)最終的にそれとは異なる判断
を下す場合も当然あり得ます。それはそれで十分に意味のあることだと思います。そうで
はなくて、ほとんど読まれずに「スルー」されている提言等が少なくないとすれば、それ
こそ憂うべき問題です。マスコミの採り上げ方などの外縁的諸条件ももちろん重要です
が、最重要因子は学術会議の見識とスタンスです。提言等の発出に際しての広報や、フォ
ローアップ活動の強化は当然行うべきこととして、やはり基軸となるのは、提言等の内容
を充実させるとともに論述の質を上げる地道な努力に帰するのではないかと思います。発
出する提言等に関して、提言内容が実行可能かつ実効性あるものであることを十分な説得
力をもって論じているか、特定の分野や組織への利益誘導と見られかねないような記述が
紛れ込んでいないか、学術会議からの他の意思表出と矛盾していないか、などを厳しく自
己点検することが必要と思います。「アウトプットよりもアウトカムが重要」とは、評価
に関して最近よく言われることですが、これは、学術会議からの意思表出の在り方に、ま
さに当てはまることではないかと思います。


〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
 東日本大震災から三周年を目前とし、当時の衝撃と暗い気持ちが甦ります。犠牲となら
れた方々を悼み、そして今もなお、仮の住まいで暮らす方々や日々の生活や健康に不安を
抱いて過ごしている方々に想いを馳せると、人文・社会科学も自然科学も含めての科学者
として、そして日本学術会議として、もっとすべきことやできることがあるのではないか
との思いに駆られます。原子力発電所事故の発生と収拾に関わる工程や放射線の健康影響
に関しては、同じ事象に対しても様々な角度から分析する科学者がいますし、同じデータ
を見ても異なる解釈をする科学者が出てきます。さらには同じ理解を基にしても異なる表
現で説明する科学者もいます。しかし、少なくとも私が直接お話ししたことのある科学者
は全員が、それぞれの信念に基づき、人々のために良かれと信じ、また願って、真摯に発
言されていました。被災地に何度も足を運び、住民との交流も重ねている方々もいらっし
ゃいます。ところが悲しいことに、時には科学者間の意見の相違が、社会に混乱と不安、
さらには科学者への不信や市民同士の不信までをももたらすことがあることも見てきまし
た。これを解消することは容易なことではないと思いますが、少しでも軽減するためには、
異なる意見を持つ科学者同士が、まず相手を思いやりつつ、一所懸命に話し合うことでは
ないでしょうか。そのような機会が作れればと思います。
  一方、国際活動の一つの柱であるフューチャー・アースについては、本部事務局を担お
うという5ヶ国による共同申請が最終段階に近づいてきました。国内外の関係者との面談
やメール等による協議を重ね、苦労の毎日です。これはまさに、国も母体組織の性格も考
え方も異なる5者、そして国内では10以上に及ぶ関係機関が、それぞれの違いを乗り越え
て一つの事務局の姿を共に描くという、難産の過程です。「絆」や「希望」という、この
三年間に何度も耳にした言葉が、ここでも心の拠りどころとなっています。




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 以下、第187回第幹事会の概要となります。

◎第187回幹事会(平成26年1月31日(金)13:45~16:30)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) フューチャー・アースの推進に関する委員会における分科会委員(1分科会)を決定
しました。
(2) 選考委員会における分科会委員(4分科会)を決定しました。
(3) 国際委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)を決定しました。
○新規設置
・持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2014分科会
(4) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)を決定しました。
○新規設置
・哲学委員会 哲学分野の参照基準検討分科会
(5) 報告「科学者から社会への情報発信のあり方について」について、家副会長より、第
183回幹事会での議論を踏まえた、その後の調整結果の説明があり、審議の結果、承認し
ました。
(6) 報告「安全な原子力であることの要件-福島原子力事故の教訓-」について総合工学
委員会原子力事故対応分科会の矢川委員長及び成合委員より説明があり、審議の結果、分
科会において改めて検討することとなりました。
(7) 平成25年度代表派遣について、実施計画の一部を変更することを決定しました。
(8) 平成26年度代表派遣について、代表派遣に係る旅費の配分計画を決定しました。
(9) Future Earth 最終提案書関係5ヶ国会合に会員を派遣することを決定しました。
(10) 15件のシンポジウム等の開催、1件の国際会議及び6件の国内会議の後援を決定しま
した。
4 その他事項として、第166回総会及び今後の幹事会開催日程について確認が行われま
した。
5 以下の非公開審議が行われました。
(1) フューチャー・アースの推進に関する委員会における分科会委員(特任連携会員)を
決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
(3) 外部委員候補者の推薦を決定しました。

 

◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  ○第166回総会(第22期・第6回) 平成26年4月10日(木)~12日(土)
  ○第167回総会(第22期・第7回) 平成26年7月11日(金)
  ○第168回総会(第23期・第1回) 平成26年10月1日(水)~3日(金)

  ※第167回総会は、第23-24期会員選考のための臨時総会です。