日本学術会議「幹事会だより No.105」について

 

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.105
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                                 平成26年4月21日発行

                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は4月10日(木)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを
受け、3月20日(木)に開催されました第190回幹事会の議事の概要を御報告いたし
ます。

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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 少し個人的な話題になります。4月1日から、国立大学法人の一つである豊橋技術科学大
学の学長に就任しました。日本学術会議では、会長も、あくまで会員の一人なので、特別
職国家公務員として、本務をどこかに持つことが想定されています。つまり、会長をはじ
め役員は、役員としての特別な給料をもらっていないということです。幸い、大学の方で
は、学長選考に際して、日本学術会議会長と総合科学技術会議議員という職を継続するこ
とを認めてくれたので、こういうことになりました。
  4月初めは入学式、皇族ご臨席の日本学術会議主催の国際会議、総会等があった上、引
越しもしたので、慌しい2週間でした。東京には97歳になる母もいるので、家族は二重
生活を余儀なくされます。この経験を通じて、少なくとも2つのことを考えてみたいと思
っています。
  一つは、東京以外に本拠地を置く会員が、日本学術会議の役員を務めることです。過去
の役員経験者からは、事実上東京在住者を対象に役員、特に会長・副会長を選んできたと
いう話を聞きました。確かに、最近ではこうしたケースが多いと思います。しかし、日本
学術会議は全国組織であり、本務先を東京外に持つ人も多いので、そうした方々も役員に
なることが望ましいのは当然です。重要な会議の際は、議長などとして、実際に会議に出
席することが必要でしょうが、打合わせをSkypeで行うなど遠隔型の意見交換を積極的に
行って、本拠地がどこにあろうと役員としての活動が可能なことを示したいと思っていま
す。
  もう一つは、以前からある、学術会議の会長・副会長のうちの何人かを常勤者とするア
イディアに一定の整理をつけることです。実は、この点は法律の規定で、日本学術会議会
員は非常勤と明記されているため、常勤とするには法改正が必要です。ですから、我々が
そうしたいと思っても、実現は簡単ではありません。しかし、必要であるならば、その旨
提案しなければはじまらないので、このことを見極めようと思っています。世界のアカデ
ミーでは、米国やドイツが有給、英国や仏国は無給等と分かれていますが、少しずつ有給
化する例が増えているように思います。科学アカデミーの仕事が重要さを増し、幹部の専
門職化が必要となったことが、こうした傾向を生んでいるのでしょう。こういう問題は、
自分のためにやっていると思われると手をつけにくいのですが、法改正という難関を含ん
でいるので、短期で解決できる問題ではなく、次の時代のために行う仕事であるのは間違
いなさそうです。私も、昨年度は常勤職についておらず、比較的多くの時間を日本学術会
議の活動に割り当てられることができたと思いますが、今年度はそうはいきません。こう
した体験を踏まえて、次代のためにあるべき制度とその実現のために必要なことを整理し
ておく必要があると思っています。


〔 組織運営・科学者間の連携担当副会長 小林良彰 〕  
 日本学術会議は、地域の科学者と意思疎通を図るとともに「地域社会の学術の振興に寄
与することを目的として」(会則第33条)、会員または連携会員により北海道、東北、関
東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄の7つの地区会議を組織しています。これらの
地区会議は、地域の求める情報に即したテーマを設定した学術講演会の開催や科学者との
懇談会、地区会議ニュースの発行などを行っています。
  具体的には、各地区会議は地区内の関係大学、関係機関・団体等の協力を得て、(1)科
学者との懇談会の開催、(2)学術講演会等の開催、(3)地区会議ニュース等の発行、(4)地
域社会の学術の振興に寄与することを目的とする事業 、(5)その他目的の達成に必要な事
業などを行っています。こうした活動を通じて、地区会議は、日本学術会議の諸活動を地
区内の科学者等に周知するとともに、日本学術会議に対する意見、要望を汲み上げて日本
学術会議と科学者との意思疎通を図ることが求められています。
  しかし、これまで各地区会議と幹事会の間に意思の疎通が十分にはかられていたとは言
い難いと思います。例えば、上記の様々な活動を行うために十分な会員数や連携会員数が
確保できていない地区会議が少なからずあるのが事実です。このため今年4月10日の総会
第一日目の幹事会に各地区会議の代表幹事または代理の方に陪席していただき、各地区会
議の活動報告と活動計画を説明していただくとともに、各地区会議からの要望をお話いた
だきました。
  既に、科学者委員会委員長である小職より、(1)会員選考に際しては改選毎に各部から
各地区会議に所属する会員を選考すること、(2)連携会員の選考に際しては各部で空白都
道府県が出ないようにする(具体的には、継続連携会員と新規連携会員を併せて、各部よ
り各都道府県に1名以上の連携会員がいるようにする)ことを選考委員会に提案して了承
を得ております。今回の選考を経て、地区会議の活動がますます活発になることを願って
おります。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
 日本学術会議とイスラエル科学人文アカデミーは昨年10月に二国間協力の覚書を交わし
ました。協力事業の具体化の打合せを行うため、学術会議からの代表団の訪問要請がイス
ラエル側からあり、あいにく大西会長や春日国際担当副会長のご都合が合わなかったた
め、代理として私が4月1日・2日の両日、エルサレムにあるイスラエル・アカデミーを訪
問してきました。イスラエル・アカデミーは人文社会科学と自然科学のあらゆる学問分野
の研究者を代表する終身任命の会員約100名で構成され、我が国で言えば学術会議と学士
院を合わたような組織です。終身会員制ですが、会員が75歳に達すると会員資格を保っ
たまま定員の枠からは外れ、新たな会員を任命することができる仕組みになっています。
定例的な会議よりも、審議課題ごとに設定されるアドホック委員会が活動の主体になって
いるようです。国際交流やヤングアカデミーの活動にも熱心に取り組んでいます。
  今回の訪問団は、日本学術会議の3部構成を反映するよう、第1部会員の羽場久美子先
生、連携会員の長谷川真理子先生(統合生物学)に同行していただきました。両国の研究
・教育機関や予算配分の状況、協力事業として採り上げるべき課題、等に関して有意義な
情報交換を行うことができました。イスラエルでは高校卒業後に兵役義務(男子3年、女
子1年9ヶ月)があり、さらに兵役終了後にグランドツアー(見聞旅行)を体験してから大
学に入学する者が多いため、大学生の年齢は他国と比べてかなり高くなっています。多く
の若手研究者が米国をはじめとする外国に流出する状況があり、外国からのポスドクを切
実に求めています。日本からもポスドクが来てくれることを期待するとのことでした。二
国間交流事業としては、年1回ないし隔年程度のペースで両国が交互にホストとなってワ
ークショップ等を開催するといった基本方針を確認しました。天然資源には恵まれず人的
資源に活路を見出さなければならないという共通項を持つ両国にとって有益となる交流事
業に関して、会員・連携会員からの具体的なテーマのご提案を歓迎いたします。


〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
 4月初め、国際科学会議(ICSU)の科学計画・評価委員会(Committee on Scientific
Planning and Review: CSPR)の第27回会議に出席してきました。CSPRは、ICSUに3つある
ポリシー委員会の一つであり、ICSUが現在から将来にわたって行うべき主要な科学イニ
シアチブや各種の決定事項について審議、審査を行い、理事会に助言する機能を担って
います。議長を務めるICSUの科学計画・評価担当副会長の下、半年に一度集まって会議を
行い、ICSUの方向性に対してかなりの示唆を与えます。委員は議長を含め15人、アカデミ
ーメンバー、ユニオンメンバーからの推薦を受けて選考された後、理事会から任命を受け
ます。他に次期会長、Secretary General, Executive DirectorがEx officioとして加わ
ります。私は2012年10月から委員になりましたが、1年目頃からようやくICSUの活動の全
体像とCSPRの役割がつかめるようになりました。
  会議は非公開なので、もちろん公開であるICSUの活動そのものの関連で、可能な範囲で
のご紹介となりますが、今回は、Strategic Plan 2012-2017の進捗状況、Future Earthの
現状、ユニオンへのアンケート調査、SDGsへのICSUの関与などについて、審議を行いまし
た。現在の大きな活動の一つであるIntegrated Research on Disaster Risk (IRDR)は、
国連との連携の点でも良い事例ですが、来年仙台で開催される国連防災世界会議への関与
について説明がありました。ユニオンへのアンケート調査からは課題が示唆されました。
各種の選考や審査が行われ、CSPRの意見として理事会に送られることになりました。さら
に、8月末~9月初めのICSU総会に提出されるCSPRの報告書をとりまとめました。自由討論
の時間もありました。
  学術会議同様、CSPRでも、自国や自分の専門分野の利益を代表してはなりません。議題
によっては退室や発言の自粛が求められることがあります。例えば今回私は、
FutureEarth事務局誘致団体のメンバーとして利益相反を申告し、当該議題の間は退室し
ていました。そして、俯瞰的、多面的に考えること、批判ではなく建設的に意見を言うこ
と、評論や演説ではなく(議長がしばしば戒め、笑いが起きました)簡潔にわかりやすく
意見をまとめることなどが要求され、とても勉強になります。




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 以下、第190回第幹事会の概要となります。

◎第190回幹事会(平成26年3月20日(木)13:30~16:10、16:35~16:50)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 若手アカデミー委員会運営要綱の一部改正(設置期限の延長1件)を決定しました。
○設置期限の延長
・若手アカデミー委員会 学術の未来検討分科会
(2) 科学と社会委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び小委員会委員を決定しま
した。
○新規設置
・科学と社会委員会 科学力増進分科会 高校理科教育検討小委員会
(3) 分野別委員会運営要綱の一部改正(設置期限の延長1件)を決定しました。
○設置期限の延長
・経営学委員会 高齢者の社会参画のあり方に関する検討分科会
(4) 提言「緊急被ばく医療に対応できるアイソトープ内用療法拠点の整備」について、臨
床医学委員会放射線・臨床検査分科会の遠藤委員長及び井上幹事より説明があり、審議の
結果、所要の修文を条件に承認しました。
(5) 「日本学術会議の運営に関する内規」及び「部が直接統括する分野別委員会合同分科
会について」の一部を改正することを決定しました。
(6) 平成27年度共同主催国際会議候補の追加を決定しました。
(7) 平成28年度共同主催国際会議候補及び保留会議を決定しました。
(8) 平成26年度の代表派遣実施計画及び実施計画に基づく4‐6月期の会議派遣者を決定し
ました。
(9) 国際社会科学評議会(ISSC)理事会に派遣することを決定しました。
(10)9件のシンポジウム等の開催及び2件の国内会議の後援を決定しました。
4 その他事項として、今後の幹事会開催日程について確認が行われた。
5 以下の非公開審議が行われました。
(1) 定年により退任する会員の連携会員への就任を決定しました。
(2) 若手アカデミー委員会における分科会委員(特任連携会員)の任期の延長を決定しま
した。
(3) 科学と社会委員会における小委員会委員を決定しました。
(4) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
特段の事情を考慮し、以下の分科会に、複数名の特任連携会員が任命されました。
・基礎生物学委員会・統合生物学委員会・基礎医学委員会合同 遺伝資源分科会
(会員・連携会員の中では、農業生物資源、ヒト由来遺伝資源、産業微生物資源の分野で
国際的に活躍している人材等の確保が難しいため。)
・農学委員会 土壌科学分科会
(東日本大震災の津波による土壌の塩類化、福島第一原発事故に伴う放射性セシウムによ
る土壌汚染に取り組む観点から、三陸地域、福島でそれぞれ主導的役割を果たしている土
壌科学者の参画が不可欠であるため。)
(5) 平成26年度代表派遣4‐6月期の会議派遣者に関連し、国際業務に参画するための特任
連携会員を任命することを決定しました。
6 非公開その他事項として、第166回総会の次第及び報告事項等について確認を行いま
した。また、家副会長から第22期2年目の外部評価について報告がありました。



◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  ○第167回総会(第22期・第7回) 平成26年7月11日(金)
  ○第168回総会(第23期・第1回) 平成26年10月1日(水)~3日(金)

  ※第167回総会は、第23-24期会員選考のための臨時総会です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆◇