日本学術会議「幹事会だより No.106」について
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幹 事 会 だ よ り No.106
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平成26年5月7日発行
日本学術会議会長
大西 隆
今回は4月25日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを
受け、4月10日(木)に開催されました第191回幹事会の議事の概要を御報告いたし
ます。
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会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕
総会の折に学術会議の透明性が話題になりました。学術会議は、会則によって会議を公
開すると定め、必要がある場合には、会議の議決を経て非公開とするとされています。し
たがって、ほとんどの会議は公開です。そのため、社会の関心が高いテーマの場合には、
メディアの関係者が傍聴することも珍しくなく、結論が出る前に報道されることもありま
す。執行部でも、社会の関心が高いテーマについては提言がまとまった後に記者説明を行
う機会を設けるようにしていますが、傍聴している記者の方々も多いので、記者説明にど
れくらい来てくれるかと気を揉むこともあります。しかし、多くの場合、結構熱心に聴い
てくれ、改めて紙面に取り上げてくれることも少なくありません。やはり、丁寧に説明
し、質問に答える機会を設けることは大事なのだといつも感じます。
最近の報道各社の関心は、STAP細胞等の研究倫理問題と、東日本大震災、とリわけ原子
力発電に関連する問題です。STAP細胞論文に関しては直接論ずる委員会はありませんが、
研究倫理については継続的にいくつかの委員会等の場で議論が行われてきました。また、
原子力発電に関しても再生可能エネルギーの供給促進、汚染水対策に加えて、新たに被災
地の健康評価・健康管理に関する委員会を発足させたので、さらに注目されることと思い
ます。また、本年3月末に報告書の形で印刷した大型研究計画マスタープラン2014も、学
術会議が示す科学研究の方向性という意味でメディアにも注目され、かなり大きく取り上
げたところもありました。もちろん、学術会議の熟慮の成果はメディアによる取り上げ度
合のみによって評価されるものではありませんが、世に広く知らせてもらえるルートとし
てマスメディアを通じた報道も重視していきたいと考えます。
〔 科学者委員会担当副会長 小林良彰 〕
昨年末、日本学術会議は提言「研究活動における不正の防止策と事後措置-科学の健全
性向上のために-」を公表し、研究不正が起きた際の事後対応策として「第三者機関を科
学者コミュニティに設置する」必要性を論じた。もちろん研究不正については、何よりも
まず当該研究機関が社会に対して明確な説明ができるよう対応措置をとらなくてはならな
い。具体的には、当該研究不正を処理する第三者委員会を遅滞なく設置し、第三者委員会
の委員の半数以上が有識者等外部委員によって構成されるとともに、全ての委員が利益相
反に該当しないことが求められる。
しかし、当該者委員会による決定に対して、研究不正の疑義を持たれた者が異論を唱え
た場合、その訴えを受け付けて処理する第三者機関が必要になる。つまり、当該研究機関
内の第三者委員会が一審を受け持つとするならば、二審を担当するために研究不正に関す
る助言及び勧告機能をもつ第三者機関を当該研究機関の外部に設置する必要が出てくる。
ここで問題となるのが、どこに第三者機関を設置するのかである。その都度、関連学会
に設置すると他分野における処理との公平性や処理の上で必要な経験が担保できるかどう
かという問題がある。そうなると、「わが国の科学者の内外に対する代表機関」(日本学
術会議法第2条)である日本学術会議が注目される。ただし、問題なのが日本学術会議に
そうした処理を担当するだけの人員と予算がないことである。一方、他に第三者機関を設
置するとなると、もはや日本学術会議だけが「研究者の代表」とは言えなくなるのではな
いか。日本学術会議の在り方見直し時期となる2015年問題とも関連するだけに、学術会議
として議論すべきことではないだろうか。
〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
学術会議のウェブサイトには「一般公開イベント」というページがあり、そこに学術会
議が主催・共催する公開シンポジウムや学術講演会の予定がリストアップされています。
学術会議のイベントのうち、自ら審議に関わった課題に関するものや自分の分野に関連の
深いものについてはそれぞれのルートで案内が入ってきますが、それ以外のイベントにつ
いては意外に情報が入ってこないものです。このページを覗くと学術会議の色々な活動が
見えてきます。例えば最近では、様々な分野において「大学教育の質保証のための分野別
参照基準」の策定が進められており、報告案の最終とりまとめに入る段階で意見交換の場
としてシンポジウムを開催するケースが多いようです。私もいくつかの分野のシンポジウ
ムを傍聴させていただきましたが、それぞれの学問分野の価値観や、最近の教育研究上の
課題などを知ることができて大変興味深いものです。そのほかにも重要なテーマの公開シ
ンポジウムや講演会が多数開催されています。
4月25日の幹事会では、今年度前半に開催を計画している以下のシンポジウムを日本学
術会議主催学術フォーラムとして実施することが承認されました。「マスタープラン2014
(仮)」(5月30日(金))、「男女共同参画は学問を変えるか?」(5月31日(土))、「国際リ
ニアコライダー(ILC)計画」(6月23日(月))、「立法システム改革と立法学の再編」(7月6
日(日))、「減災の科学を豊かに」(7月20日(日))、「研究倫理教育プログラム」(7月29日
(火))。
いずれも、今期の学術会議で精力的に取り組んでいる課題です。多くの会員・連携会員
のご出席と積極的な討論参加をお願いいたします。
〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
4月28日と29日、大韓民国学術院(The National Academy of Sciences: KNAS)と韓国科
学技術アカデミー(Korean Academy of Science and Technology: KAST)を訪問するととも
に、先方のご予定の関係で韓国行政研究院(The Korea Institute of Public
Administration: KIPA)と朝食会議を行ってきました。韓国ではセウォル号の事故により
国中が悲しみに包まれているところですので、いずれの機関においてもまずは丁重にお見
舞いを申し上げ、日本人も大変心を痛めていることをお伝えしました。
KNASは日本学士院と似た組織、会員制度を持ち、日本学士院と毎年の交流を重ねていま
すが、政府に対する提言機能、ICSU、IAP、SCA他のメンバーシップなど、日本学術会議と
共通する面も持ちます。今後、学術会議としてもKNASとの交流をより深めたいと申しあ
げ、賛同いただきました。KASTは政府等への科学的助言機能をさらに促進するため、20年
前に設立されました。会員に70歳定年制を導入したり、活発な助言機能を有する点では、
KNAS以上に日本学術会議に近いとも考えられます。やはりSCAのメンバーであるとともに、
IAPの地域組織でもあるAASSAの事務局を置く組織でもあります。4月の総会でもお伝えしま
したように、学術会議はISSCに加えAASSAへの新規加入に対しても総理承認をいただくこと
ができました。今回は、そのこともお伝えし、AASSAにおける日本学術会議の活動の方向に
ついても認識を共有しました。AASSAへの加入は、黒川元会長から強く勧められ、大西会長
もそのご意向も踏まえて手続きを進めてこられたものです。KASTにはその経緯についても
歓迎されました。また、若手研究者の交流とFuture Earth活動での連携を提案し、共感さ
れました。 一方、政府の公共行政研究機関であるKIPAとは昨年末まで特に接点がありませ
んでしたが、小林副会長へのご来訪がきっかけとなり、今年6月に開かれるKIPA主催の国際
会議に第一部会員の岩本康志先生にご参加いただくまでの交流に発展してきました。
韓国とは、一度、KAST会長が学術会議を訪問されたことがあったものの、今期に入って
からも、特に二国間での交流には至っていませんでした。しかし、隣国との学術交流を重
視したいという大西会長の方針を受け、これまで相手側からの提案が先行する形が多かっ
た二国間交流に関し、日本から積極的に交流を呼びかけるのは韓国が初めてであると申し
上げ、日本学術会議としての気持ちをお伝えしました。それに対し、いずれの機関でも会
長ほか幹部が揃ってご対応くださり、心の通う大変温かな歓迎にとても感動しました。ご
報告に立ち寄った日本大使館でも、特に今の難しい情勢の下、学術会議の行動に感謝する
との言葉をいただきました。今回の訪問が、両国のアカデミー交流の継続的な発展につな
がるよう、活動を続けてまいります。
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以下、第191回第幹事会の概要となります。
◎第191回幹事会(平成26年4月10日(木)17:40~19:05)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 「委員会及び分科会等に係る特任連携会員の選考の在り方について」の一部改正を決
定しました。
(2) 東日本大震災復興支援委員会運営要綱の一部改正を決定しました。
○新規設置
・東日本大震災復興支援委員会 原子力発電所事故に伴う健康影響評価と国民の健康管理
並びに医療のあり方検討分科会
(3) 国際委員会における分科会委員(1分科会)を決定しました。
(4) 選考委員会における分科会委員(1分科会)を決定しました。
(5) 分野別委員会における分科会委員(2分科会)を決定しました。
(6) 韓国学術院(The National Academy of Sciences)及び韓国科学技術アカデミー(
Korean Academy of Science and Technology)との今後の交流に関する打ち合わせ会議に
会員を派遣することを決定しました。
(7) 各地区会議代表者から各々の地区会議の活動について報告を受け、意見交換を行った
上で、平成26年度各地区会議事業計画を決定しました。
(8) 1件のシンポジウム等の開催及び1件の国内会議の後援を決定しました。
4 その他事項として、今後の幹事会開催日程について確認が行われました。
5 以下の非公開審議が行われました。
(1) 国際委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
特段の事情を考慮し、健康・生活科学委員会・環境学委員会合同環境リスク分科会に、複
数名の特任連携会員が任命されました。
(分科会の取扱い範囲が広く、また、東日本大震災への対応の必要という緊急性がある
中、廃棄物の専門家、及び有害化学物質の影響の専門家で、かつ、既に現地において活動
をしている人材が不可欠であるため。)
◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇―――――――――――――――――――――
次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。
○第167回総会(第22期・第7回) 平成26年7月11日(金)
○第168回総会(第23期・第1回) 平成26年10月1日(水)~3日(金)
※第167回総会は、第23-24期会員選考のための臨時総会です。
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