日本学術会議「幹事会だより No.110」について

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.110
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                                 平成26年9月9日発行
                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は8月8日(金)及び8月28日(木)に開催されました幹事会で、それぞれ議事
要旨が確認されましたことを受け、7月25日(金)に開催されました第197回幹事会
及び8月8日(金)に開催されました第198回幹事会の議事の概要を御報告いたします。


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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 8月から9月はじめにかけては、研究者が動き易いということで、大きな会合がありまし
た。国内では、8月初めに日本学術会議の第一部から第三部までの夏季部会が開催されま
した。ちょうど、内閣府の科学技術政策担当大臣の下で、日本学術会議の2005年改革の成
果を評価し、その設置のあり方を検討するための「日本学術会議の新たな展望を考える有
識者会議」が始まったので、私からはこれに関連した評価や設置のあり方について話題提
供し、会員の皆さんと意見交換しました。種々のデータにおいて、女性会員の増加、活動
地域の多様化、分野横断型委員会活動の活発化、新聞等の取り上げ頻度に示される日本学
術会議への社会的関心の増大、さらに提言等が政府に取り上げられるケースの増大等が示
されており、コ・オプテーション、任期・定年制、幹事会制度の導入等をはじめとした
2005年改革は良好な結果を生んでいると見ることができます。もちろん、各部会では、日
本学術会議がもっと活性化して、社会からも有用と思われるはずだという意見が出まし
た。私も、現在の活性化傾向を踏まえて、さらに社会における役割を高めていくことがで
きるはずだと感じています。
  9月初めにはオークランド(ニュージーランド)で、ICSUの第31回総会が開催されまし
た。3年に1回のイベントで、私も、一緒に参加した春日文子副会長、巽和行第三部副部長
も初めての経験でした。これまでの活動の報告、それを踏まえた今後の活動のあり方につ
いて、1件につき30-45分程度のペースで進んでいく議論は、国際的な科学者の議論の最前
線を知る上で格好の機会でした。
  総会のハイライトは、新役員の選出です。日本からは、日本学術会議の推薦で理事会(
EB)の1人に巽先生が立候補していました(国別アカデミーの部門)。候補者を8人に選ぶ
1回目の選挙に残り、さらに4人の理事を選ぶ最終選挙で見事当選しました。ただ、同時に
行われた、ユニオン(専門分野の国際組織)からの理事選考では、IUMRSの代表も日本から
でしたが、決戦まで残ったものの、惜しくも当選できませんでした。新会長には、既に選
ばれていたGordon McBean氏(カナダ)が就任し、次期会長にはDaya Reddy氏(南ア)が
選ばれました。3年間会長を務めた李遠哲氏(台湾)は、直前会長として引き続き活躍さ
れます。また、2017年の次回総会は、台湾で行われることに決まりました。

〔 科学者委員会担当副会長 小林良彰 〕
 科学研究は社会からの信頼の上に成り立っており、こうした信頼が薄れたり失われたり
すれば、科学研究がよって立つ基盤が崩れることになります。このため、日本学術会議で
は平成25年1月に声明「科学者の行動規範―改訂版―」を発出して研究者が遵守すべき規
範を示すとともに、同年12月に提言「研究活動における不正の防止策と事後措置」を公表
して、研究不正の事前防止策と事後対応策を提示してきましたが、研究活動における不正
行為の事案が後を絶たず、社会的に大きく取り上げられるようなっています。こうした事
態を背景に、平成26年7月に文部科学省科学技術・学術政策局長より研究健全性問題を検
討するよう審議依頼を受け、様々な分野の意見を踏まえた科学研究における研究健全性問
題を研究者コミュニティが自ら主体的に検討するために、新たに研究健全性問題検討分科
会が設置されました。
  この研究健全化問題検討分科会では、様々な分野の研究者に集まってもらい、実験デー
タ等の保存の期間及び方法や特定不正行為(捏造、改ざん、盗用)以外の不正行為の範囲
(二重投稿・オーサーシップの在り方等)などについて、各研究分野の特性に応じて協議
を進めていくことになります。また、研究倫理教育に関する参照基準や研究機関における
研究不正対応に関する規程のモデルについても議論をして行きたいと考えております。今
後、幾度かの分科会を経て、来年3月までに上記局長に対する回答を作成・提出する予定
です。各分野における上記の問題についてお考えをお持ちの方は、ご意見を事務局宛に送
付頂ければ幸いです。

 〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 家泰弘 〕
 幹事会附置委員会「原子力利用の将来像についての検討委員会」の「原子力学の将来検
討分科会」では提言案「発電以外の原子力利用の将来のあり方について」をとりまとめて
いるところですが、8月30日(土)に日本学術会議近畿地区会議、原子力学の将来検討
分科会及び大阪大学の主催による学術講演会「発電以外の原子力利用の課題と展望」が大
阪科学技術センター(協賛)で開催されました。この講演会は、原子力発電以外の原子力
利用(放射線、ラジオ・アイソトープ、量子ビーム)をテーマとして、その現状と将来を
俯瞰するものでした。予想を超える参加申込みがあり、直前に会場をより大きなホールに
変更するという嬉しい誤算がありました。
  講演会を企画した中嶋英雄会員の司会で、主催者の近畿地区会議の橋田充代表幹事と大
阪大学の馬場章夫理事・副学長からの開会挨拶の後、7件の講演が行われました。「原子
力学の将来検討」(家泰弘)で上記の提言案の概要が示されたのに続いて、「農学・生命
科学における放射線利用」(中西友子)、「加速器の医学利用」(米倉義晴)、「ホウ素
中性子捕捉療法(BNCT)による難治性がんへの挑戦」(鈴木実)、「研究用原子炉を用いた
工業生産」(河村弘)、という4つの講演が行われました。農学・生命科学、医療、材料
工学など多彩な分野での放射線・RI・量子ビームの特徴ある応用例が豊富な図や写真に
よって示されました。続いて「大阪大学における原子力人材育成」(山中伸介)、「近畿
大学における原子力人材育成」(伊藤哲雄)という2つの講演で、原子力分野の教育・人
材育成への取り組みが紹介されました。その後、会場からの質問に各講演者が答える形で
総合討論が行われましたが、的確な質問が多く、原子力利用の諸相に関する理解を深める
機会となったとの印象をもちました。研究用原子炉を擁する我が国でただ2つの大学(京
都大学と近畿大学)が近畿地区にあり、原子力機構の再編に関わる事柄とともに、我が国
の研究教育用原子力施設の将来の在り方を早急に検討して行かなければならないとの思い
を深くしました。

〔 国際活動担当副会長 春日文子 〕
 8月31日から9月3日、国際科学会議(ICSU)の総会に出席してきました。ICSUはご存知の
ように、31の学術分野のユニオンメンバーと121のナショナルメンバーから成る大きな組
織です。日本学術会議からは、これまで吉川弘之先生が会長、黒田玲子先生が副会長を務
めらました。そして今回の総会において、大変喜ばしいことに、第三部副部長であり、国
際委員会副委員長の巽和行先生が理事に当選されました。
  3年に一度開かれる総会では、主な活動や予算に関する報告があり、それらに関して承
認、議決が行われます。今回は外部評価の結果が報告され、また、3つの基調講演もあり
ました。さらに、希望する機関にはポスター展示の場が提供され、ポスターエスプレッソ
と称して、順番に1分45秒間の短い口頭紹介も行われました。日本学術会議も参加し、私
は急遽、早口の練習に励むことになりました。
  そして大変重要な議題に、執行部の選挙があります。次期会長、二人の副会長、専務理
事、財務担当がそれぞれ選挙で選ばれ、前総会で選ばれている会長とともに、今回の総会
最終日以降、その役職に就きます。また執行委員は、ナショナルメンバーとユニオンメン
バーからそれぞれ4人が選ばれます。いずれのメンバーもナショナル、ユニオン、それぞ
れの枠に対する投票権を持っています。巽先生はIUPAC(国際純正・応用化学連合)の前
会長でいらっしゃることから、ユニオンメンバーからの支持も集められたものと思いま
す。各国際対応分科会の先生方にも、各ユニオンの総会出席者に対して支援をお願いいた
だくなどご協力いただきました。厚く御礼申し上げます。巽先生のご当選は、これまでの
皆様のICSUにおける活動が広く評価された結果であると思います。それに加え、大西会長
を筆頭に、巽先生ご自身も含め、日本から参加したほぼ全員が、総会の場で積極的に発言
し、ICSUへの貢献を適切にアピールしたことへの手応えもあったと感じています。山田次
長をはじめ、現地に同行した事務局のプレゼンスも大きいものでした。国内待機組も含
め、連日深夜まで残業して準備に励んだ事務局の皆様に深く感謝します。巽先生には、心
からお祝いを申し上げるとともに、今後、ICSUの活動をより詳しく国内にもご紹介いただ
ければありがたく存じます。
  今回、Future Earth、Disaster Risk Reduction、World Data Systemなど、ICSUの中心
的テーマにおける日本の役割についても何度も言及されました。国際的役割と責任をさら
に強く認識してきました。次期においても、広く会員、連携会員が協力して、これらを引
き継ぎ、さらに発展させることが重要と思います。



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 以下、第197回~第198回第幹事会の概要となります。

◎第197回幹事会(平成26年7月25日(金)13:30~18:15)
審議事項等
1 冒頭、事務局の人事異動(事務局次長、企画課長)に伴う挨拶が行われました。
2 前回議事要旨の確認が行われました。
3 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
4 以下の公開審議が行われました。
(1) 提言「超高齢社会のフロントランナー日本:これからの日本の医学・医療のあり方
」について、臨床医学委員会老化分科会の大島委員長及び荒井幹事より説明があり、審議
の結果、所要の修正を行い、会長及び第二部の確認を得ることを条件に承認しました。
(2) 提言「農林水産業への地球観測・地理空間情報技術の応用-持続可能な食料生産と
環境保全-」について、農学委員会・食料科学委員会合同農業情報システム学分科会の野
口委員長及び齊藤幹事より説明があり、審議の結果、所要の修正を行い、会長の確認を得
ることを条件に承認しました。
(3) 提言「医学教育における放射線の健康リスク科学教育の必修化」について、臨床医
学委員会放射線防護・リスクマネジメント分科会の神田幹事より説明があり、審議の結
果、所要の修正を行い、会長及び第二部の確認を得ることを条件に承認しました。
(4) 提言「震災復興原則を踏まえた環境政策・環境計画の新たな展開」について、環境
学委員会環境政策・環境計画分科会の花木副委員長より説明があり、審議の結果、所要の
修正を行い、会長の確認を得ることを条件に承認しました。
(5) 報告「東京電力福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性物質
の輸送沈着過程に関するモデル計算結果の比較」について、総合工学委員会原子力事故対
応分科会の柴田幹事より説明があり、審議の結果、所要の修正を行い、会長の確認を得る
ことを条件に承認しました。
(6) 報告「数理科学と他分野科学・産業との連携」について、数理科学委員会数学分科
会の楠岡委員長より説明があり、審議の結果、報告(案)の扱いについて、会長において
第三部と相談の上、検討することとなりました。
(7) 提言「ビックデータ時代における統計科学教育・研究の推進について」について、
数理科学委員会数理統計学分科会の竹村委員長より説明があり、審議の結果、所要の修正
を行い、会長の確認を得ることを条件に承認しました。
(8) 提言「社会的包摂:レジリエントな社会のための政策」について、社会学委員会・
経済学委員会合同包摂的社会政策に関する多角的検討分科会の阿部副委員長及び大沢委員
より説明があり、審議の結果、所要の修正を行い、会長及び第一部の確認を得ることを条
件に承認しました。
(9) 提言「これからの労働者の心の健康の保持・増進のために」について、基礎医学委
員会・健康・生活科学委員会合同パブリックヘルス科学分科会の川上委員より説明があ
り、審議の結果、所要の修正を行い、会長及び第二部の確認を得ることを条件に承認しま
した。
(10) 平成26年度代表派遣に係る配分計画及び実施計画の変更を決定し、実施計画に基づ
く7-9月期の会議派遣者(追加1件)を決定しました。
(11) 7件のシンポジウム等の開催、1件の国際会議及び2件の国内会議の後援を決定しまし
た。
(12) 「第22期における分科会活動の総括結果について」を承認した。
(13) 科学研究における健全性の向上に関する検討委員会運営要綱の一部改正(新規設置
1件)及び分科会委員(1分科会)を決定しました。
〇新規設置
・科学研究における健全性の向上に関する委員会 研究健全性問題検討分科会
5 その他事項として、第168回総会及び今後の幹事会開催日程について確認が行われま
した。また、会長から記録「Future Earth 持続可能な地球社会をめざして」の公表につ
いて説明がありました。
6 以下の非公開審議が行われました。
(1) 東日本大震災復興支援委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しまし
た。
(2) フューチャー・アースの推進に関する委員会における委員(特任連携会員)を決定
しました。
(3) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
(4) 科学研究における健全性の向上に関する検討委員会における分科会委員(特任連携
会員)を決定しました。
7 非公開その他事項として、大西会長から「第12回産学官連携功労者表彰日本学術会議
会長賞」の決定について報告がありました。

 
◎第198回幹事会(平成26年8月8日(木)13:30~17:00、19:10~20:00)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 前回の幹事会以降の諸報告事項について確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 補欠の連携会員の選任の要望を承認し、推薦を行う部を第二部に決定しました。
(2) 提言「日本学術会議の果たし得る評価機能について」について、日本学術会議の第
三者評価機能に関する検討委員会の岡田委員長より説明があり、提言(案)の扱いについ
ては、会長において副会長3名及び日本学術会議の第三者評価機能に関する検討委員会と
相談の上、検討することとなりました。
(3) 提言「各種選挙における投票率低下への対応策」について、政治学委員会政治過程
分科会の小野委員長より説明があり、審議の結果、所要の修正を行い、会長の確認を得る
ことを条件に承認しました。
(4) 報告「若手研究者ネットワークの継続的運用に向けて」について、若手アカデミー
委員会若手研究者ネットワーク検討分科会の蒲池委員長及び横山副委員長より説明があ
り、審議の結果、所要の修正を行い、会長の確認を得ることを条件に承認しました。
(5) 提言「ビッグデータ時代に対応する人材の育成」について、情報学委員会E-サイエ
ンス・データ中心科学分科会の北川委員長より説明があり、審議の結果、所要の修正を行
い、会長及び第三部の確認を得ることを条件に承認しました。
(6) 報告「変化に対応する生産科学の振興と人材育成」について、機械工学委員会生産
科学分科会の木村委員長及び圓川委員より説明があり、審議の結果、所要の修正を行い、
会長及び第三部の確認を得ることを条件に承認しました。
(7) 提言「東日本大震災を教訓とした安全安心で持続可能な社会の形成に向けて」につ
いて、地球惑星委員会地球・人間圏分科会の春山委員及び平田委員より説明があり、審議
の結果、提言(案)の扱いについては、会長において第三部と相談の上、検討することと
なりました。
(8) 平成26年度代表派遣にかかる実施計画の一部の変更を決定しました。
(9) 「土曜日・日曜日及び祝日におけるシンポジウム、講演会等の開催について」等の
一部改正について意見交換を行った。その結果、土曜日・日曜日及び祝日に日本学術会議
講堂で開催できるシンポジウム等の回数を増やす等の方針が承認されたが、関係規程の改
正については、今回の意見交換を踏まえた修文を行った上で、次回幹事会において再審議
されることとなりました。
(10) 8のシンポジウム等の開催を決定しました。
4 その他事項として、今後の幹事会開催日程について確認が行われました。
また、会長から、幹事会声明「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会
議の見解について」(平成26年7月25日)に関連して、独立行政法人理化学研究所から回
答があったことや、基礎生物学委員会・統合生物学委員会・基礎医学委員会合同分子生物
学分科会の岡田委員長から会長及び幹事会委員宛てに同分科会がまとめた意見書の提出が
あったことについて説明があり、意見交換を行われました。その結果を踏まえ、後日、会
長が、岡田委員長に対する回答を作成し、幹事会の意見を聞いた上で、送付することとな
りましたた。なお、本件に関する資料については、日本学術会議の運営に関する内規第20
条の規定により、「非公開」とすることとなりました。



◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  ○第168回総会(第23期・第1回) 平成26年10月1日(水)~3日(金)