日本学術会議「幹事会だより No.117」について

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.117
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                             平成27年4月7日発行

                               日本学術会議会長
                                   大西 隆

 今回は3月27日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを受
け、2月27日(金)に開催されました第209回幹事会の議事の概要を御報告いたします。


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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 3月27日(金)に幹事会があり、翌日の土曜日に勤務先大学の今年度最後の行事があっ
て、日曜日に中部国際空港を出発してローマに向かうという慌しい年度末でした。目的
は、ローマのイタリア・アカデミー(リンチェイ)とECの合同研究センター(JRC)が主
催した「第19回エドアルド・アマルディ会議―原子安全、核セキュリティ、保障措置、
核不拡散を強化するための国際協力」への出席でした。アマルディは、フェルミの共同
研究者としても知られる著名なイタリアの物理学者でリンチェイの会長も務めました。
特に、会長時代に安全保障と軍縮に関わる会議を主催したことで、それ以来、このテー
マの会議をリンチェイが行っているとのことでした。リンチェイは、施設内のWiFiのPW
に1603が含まれていることに示されているように、17世紀初期に淵源を辿ることができ
る、現在につながるものとして世界で最も古い科学アカデミーです。
 私が任されたセッションは、原子力の保障措置と核不拡散と題するもので、CTBT機構、
IAEA、NSG(各関連物質供給国グループ)がスピーカーで、私は、議長として、趣旨説明
ととりまとめを行うという役どころでした。ご承知のように、核兵器保有量の削減などが
行われてきた一方で、核兵器の開発を疑われている国は北朝鮮、イラン等、後を絶たず、
核拡散防止については焦燥感が強まる現状にあるといえます。また、原子力発電について
は、特に東京電力福島第1原子力発電所の重大事故後、安全性への関心は強まり、安全神
話は崩れています。その意味で、原子力の安全性や保障措置に関する問題は一層重要度が
増しています。別なセッションでは、各国の原子力政策の動向なども報告され、欧州で
は、福島の事故に対応しつつも、いくつかの国では引き続き原発が推進されていることが
示されました。原発を稼働すれば、日本を含めて、世界のどこかで、そう遠くない時期に
また過酷事故が起こりうるという前提で、原発のあり方を考えること、同時にそのことを
考え続けるために、福島の事故が忘れ去られないように、なお継続している事故とその影
響に関するきちんとした状況報告を出し続けることの重要さを改めて感じました。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
 3月の幹事会では、科学と社会委員会年次報告書等検討分科会(3月6日開催)で行われ
た外部評価委員からの意見聴取の模様を報告いたしました。今回は第22期最後の1年間(
平成25年10月~平成26年9月)の活動が評価対象であり、幹事の吉川弘之先生はじめ、外
部評価委員の先生方から、厳しくも前向きの意見を頂戴いたしました。とりわけ、学術会
議が、学術の世界をはじめ、政府や社会に対して果たす役割の重要性、それゆえに、「そ
の役割がきちんと果たされているか」という問いかけは、それ以前の外部評価書でも指摘
されており、「科学と社会委員会」を預かる者として、深刻に受けとめております。しっ
かりやっているはずなのに見えにくいのでしょうか。
 学術会議が今、何を議論しているのか、それは我が国にとってどのような意味を持つの
か、それは学術の世界に、そして政府や社会、国民にちゃんと届いているのか――今回の
外部評価書には、学術会議は、各専門領域に関わる議論以上に、専門をつなげて統合して
いく(integrate)ような議論をもっと発信すべきではないかとあります。実際には、課
題別委員会や幹事会附置委員会を中心に、そのような意思の表出は増えておりますし、大
西会長からは「今後もそうした分野横断的な課題を大事にしていきたい」との発言もあり
ました。ここでも、問題はやはり、見えにくいこと、わかりにくいことにあるのでしょう
か。
 3月下旬に出された「日本学術会議の新たなる展望を考える有識者会議」の報告書とと
もに、外部評価委員の意見を加味して、「科学と社会委員会」では4月から具体的な議論
に入りたいと思います。現代の日本や世界が抱える専門横断的な課題、長期スパンで考え
ねばならない学術共通の課題等、多様な科学者が集う学術会議ならでの発信について、ご
意見、お知恵をどうかお寄せください。
 「社会と科学委員会」では、専門を横断する提言等の意思の発出を学術の世界や政府、
社会にきちんと届けられるように、査読体制をより整備、充実させたいとも思っておりま
す。と同時に、政府や社会、国民との連携の場にも工夫が必要だと考えております。
 第23期開始から半年が経ち、これまでなされたこと、これからなすべきことが明らかに
なりつつあります。会員、連携会員の皆様、引き続きよろしくお願いいたします。

○日本学術会議HP内「日本学術会議第22期3年目(平成25年10月~平成26年9月)の活動
状況に関する評価」URL
  http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/nenji/hyoka2015.pdf

〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
 3月下旬、第1回日本-イスラエル二国間シンポジウムがエルサレムにて開催され、副会
長として、また水の専門家の一人として参加して参りました。これは二国間学術交流の一
環です。
 日本学術会議とイスラエル科学人文アカデミー(IASH)の間では、準備的交流を経て、
去る2013年10月に交流協定が結ばれ、2014年3月には当方から数名が先方を訪問し、同年8
月には先方が来訪し、具体的な交流分野を特定する努力が行われてきました。今回選ばれ
た水のマネジメントと水処理技術は、双方の国とも世界的に高い水準にあるものです。
 今回、日本学術会議からは、大垣眞一郎連携会員、浅見真理連携会員、田中宏明特任連
携会員と私が参加しました。
 元々雨が少ないイスラエルは、水の再利用の技術が進んでいることで有名です。海水淡
水化、下水処理水の再利用と地下水涵養など水資源の供給側を確保するだけではなく、点
滴かんがいによって農業用水の需要の大幅削減を達成し、その結果として水不足のリスク
を回避することに成功しています。イスラエルでは必要な水の約半分が海水淡水化プラン
トから供給されているそうです。
 丸一日かけた専門家同士の深い議論に加えて、前述の海水淡水化、下水処理水再利用プ
ラントの視察は大いに有意義なものでありました。



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  以下、第209回幹事会の概要となります。

◎第209回幹事会(平成27年2月27日(金)14:00~16:15)
1 前回議事要旨の確認を行いました。
2 以下の公開審議を行いました。
(1) フューチャー・アースの推進に関する委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及
び分科会委員(1分科会)を決定しました。
○新規設置
・フューチャー・アースの推進に関する委員会 フューチャー・アースの国際的展開対応
分科会
(2) 幹事会附置委員会「学術振興の観点から国立大学の教育研究と国による支援のあり方
を考える検討委員会」を新規に設置することとし、審議事項を一部変更した上で、運営要
綱を決定しました。
(3) 国際委員会運営要綱の一部改正(調査審議事項及び設置期間の変更1件1件)を決定し
ました。
○調査審議事項及び設置期間の変更
・国際委員会 防災・減災に関する国際研究のための東京会議分科会
(4) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置4件)及び委員会等委員(29分科会、6小
委員会)を決定しました。
〇新規設置
・環境学委員会・地球惑星科学委員会合同 IGBP・WCRP・DIVERSITAS合同分科会PAGES小委
員会
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 力学基盤工学分科会 力学の深化・統合小委員会
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 力学基盤工学分科会力学の展開小委員会
・環境学委員会・土木工学・建築学委員会合同 低炭素・健康社会の実現への道筋と生活
様式・消費者行動分科会 低炭素・健康社会都市小委員会
(5) オープンサイエンスの取組に関する検討委員会における委員を決定しました。
(6) 提言「第5期科学技術基本計画のあり方に関する提言」について、学術の観点から科
学技術基本計画のあり方を考える委員会の土井委員長及び小森田幹事より説明があり、審
議の結果、承認しました。
(7) 平成28年度共同主催国際会議候補の追加を決定しました。
(8) 平成29年度共同主催国際会議候補及び保留会議を決定しました。
(9) 平成27年度の代表派遣実施計画及び実施計画に基づく4‐6月期の会議派遣者を決定し
ました。
(10)ベトナム及びラオスの学術機関等との会合に会員を派遣することを決定しました。
(11)提言等の査読を円滑に行うために、「提言等の提出チェックシート」の運用を開始す
ることを決定しました。
(12)「日本学術会議栄誉会員規程」及び「日本学術会議協力学術研究団体規程」の一部を
改正することを決定しました。
(13)日本学術会議協力学術研究団体の指定(8団体)を承認しました。
(14)1件のシンポジウム等の開催、2件の国際会議及び6件の国内会議の後援を決定しまし
た。
(15)「地すべり災害リスクの理解と軽減を地球規模で推進するための国際防災戦略
(ISDR)-国際斜面災害研究機構(ICL)仙台パートナーシップ2015-2025」に賛同するこ
とを決定しました。
3 その他事項として、科学者委員会・科学と社会委員会合同広報・科学力増進分科会の
小松委員長から、日本学術会議が編集協力を行っている「学術の動向」の今後の特集テー
マについて報告がありました。また、今後の幹事会の開催日程について確認が行われまし
た。
4 以下の非公開審議を行いました。
(1) フューチャー・アースの推進に関する委員会における分科会委員(特任連携会員)を
決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(14分科会)及び小委員会委員(
7小委員会)を決定しました。
(3) 2015年バルザン賞受賞候補者受賞候補者を推薦することを決定しました。
(4) 日本学術会議連携会員の辞職の承認することに同意しました。


◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  「第169回総会」 平成27年4月9日(木)~4月11日(土)
  「第170回総会」 平成27年10月1日(木)~10月3日(土)
  「第171回総会」 平成28年4月7日(木)~4月9日(土)

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