日本学術会議「幹事会だより No.118」について

 

 

---------------------------------------------------
幹 事 会 だ よ り No.118
---------------------------------------------------
                                平成27年5月8日発行

                                  日本学術会議会長
                                      大西 隆

 今回は4月9日(木)及び4月24日(金)に開催されました幹事会で、それぞれ議事要旨
が確認されましたことを受け、3月27日(金)に開催されました第210回幹事会及び4月9日
(木)に開催されました第211回幹事会の議事の概要を御報告いたします。
  また、4月24日に開催されました幹事会において、第171回総会の日程の変更と第172回
総会の日程が確認されました。会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお
願いいたします。

  ◇◇今後の総会日程について◇◇ 
  「第170回総会」 平成27年10月1日(木)~10月3日(土)
  「第171回総会」 平成28年4月14日(木)~4月16日(土)※日程変更
  「第172回総会」 平成28年10月6日(木)~8日(土)※今回追加決定


====================================================
  会長・副会長より
====================================================


〔 会長 大西隆 〕 
 4月9~11日に、日本学術会議第169回総会が開催されました。私から会員の皆様に報告
した内容の中で、最も重要だったものは、「日本学術会議の新たな展望を考える有識者
会議」の報告でした。しかし、この点については、既に「学術の動向」4月号の会長メッ
セージで、有識者会議の取りまとめが、現在の日本学術会議の活動をエンカレッジする
ものであったという趣旨を述べています。
 そこで、ここでは、近年、科学技術の発展によるイノベーションの重要性が強調される
中で、学術研究の役割、さらには学術研究の中心的な場である大学をはじめとする研究機
関の役割を改めて議論し、こうした機関への公的資金の投入の在り方について再検討しよ
うとする動きが強まっていることに触れます。イノベーションを技術革新とそれを通じた
社会の変革とする理解が共有されてきたと思います。つまり、科学や技術の深化や新発見
に止まらず、それらが社会に適用されて社会に主要な変化をもたらすことがイノベーショ
ンであると解されています。
 科学者の好奇心をベースにした科学研究は、結果の応用性を必ずしも意図する必要はな
いという立場があることはよく理解できますが、しかし、結果の応用性や社会的有用性が
全く不確かな研究開発に、税を原資とした公的資金を投入せよという理屈は、さすがに説
得力を欠くでしょう。その意味では、種々の政策で、科学技術をイノベーションの可能性
という観点から評価するようになったのは、当然のことではないかと思います。しかし、
これは、基礎研究や好奇心に基づいた研究を、公的支援の対象から外すことではありませ
ん。重要なことは、そうした研究を、さらに先のステップになる応用や実用へと発展させ
る研究を充実させて、基礎研究の広い裾野の上に、社会に大きなイノベーションを起こす
ような実用的な科学技術の成果がいくつも生まれるような、重厚な研究開発体制を構築す
ることです。社会に有用であることを信じつつも、研究者にも成果の実用性が見えていな
いような好奇心に基づく研究が必要であるのは疑いありません。しかし、同時に、その研
究成果を社会変革につなげようという明確な意識を持った研究も拡充される必要がありま
す。後者が、いわば新しい試みとして、大いに論じられているので、大学においても、役
割の幅を広げて、イノベーション指向の研究者が拡大していくことは望ましいことではな
いかと思っています。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
 4月の総会では、23期が始まってからの半年間の「科学と社会委員会」の活動と「外部
評価書」の報告をいたしました。講堂に参集された会員の皆様とのやりとりの中で、今
後の活動について確認できたことがいくつかありました。
 一つは、提言等の意思の発出を、各委員会・分科会の総括、活動のまとめ的な意味以上
に、それぞれの議論の「プロセス」として位置づけ、機能させる必要性です。言い換えれ
ば、提言等を出すことがゴールではなく、それが政府や社会、国民に届いているかどう
か、一期3年という限られた時間内ではあっても、そのフォローアップを射程に入れて活
動していかねばならないということです。
 もう一つは、学術会議で分野横断的なテーマを取り上げ、考える重要性です。その機能
を有する委員会としては、現在、幹事会附置委員会と課題別委員会があります。前者は「
東日本大震災復興支援委員会」、「科学研究における健全性の向上に関する検討委員会
」、「学術振興の観点から国立大学の教育研究と国による支援のあり方を考える検討委員
会」など10の委員会を抱えていますが、後者の課題別委員会は、「高レベル放射性廃棄物
の処分に関するフォローアップ検討委員会」と「オープンサイエンスの取組に関する検討
委員会」の2つしかありません。日本の学術の未来を考えるにせよ、社会が喫緊に求める
問題解決のための助言にせよ、学術会議が見るべき、いや学術会議だからこそ取り組むべ
き課題はたくさんあるはずです。
 会員、連携会員の皆様、課題別委員会の充実に向けて、具体的なご提案があれば、是非
お寄せください。幹事会での議論につなげたいと思います。

〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
 4月の総会におきましては、日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議の報告を始
めとして、様々な活動紹介と討議が行われました。これらを通じて、学術会議としての、
専門分野・部にまたがる横断的な活動の更なる推進の必要性、発出した提言のフォローア
ップを始めとした社会との関係の強化の重要性を感じました。
 総会の国際活動報告の中で私が紹介し、またしばしば他の場面でも言及されたのが、世
界的な研究プログラムである、フューチャー・アース(FE)です。しかし、その中身につ
いては、詳細がまだ定まっていない、というのが率直なところだと思います。このプログ
ラムは、枠組みに特徴を持たせようとしています。それは、Transdisciplinary(超学的
)と呼ばれる、社会と学術の間の協働関係です。社会のさまざまなステークホルダーと共
に、研究を設計、実施し、そして成果を活用するという枠組みこそが必要、というのがFE
の特徴です。学術分野間の学際的な協力も当然の前提となっています。とりわけ人文社会
科学と自然科学の実りある協働がプログラムの推進に不可欠となっています。実際、公表
されている「戦略的研究課題2014 (Strategic Research Agenda 2014)」を見てみると、
一つひとつの研究課題が、多くの学問分野の協力なしには研究計画を立てることすら出来
ないことが分かります。
 このように、日本学術会議が直面している課題と、FEの挑戦的な枠組みには共通点があ
ります。すなわち、新たな枠組みでのFEの具体化は、日本学術会議が直面している、横断
的活動と社会との関係強化という課題の解決につながるものと言えると思います。FEの考
え方を常に意識しつつ、日本学術会議の日々の活動を進めていきたいと考えております。



=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=・=
SCJ Member Forum (会員・連携会員専用掲示板)
http://www.scjbbs.go.jp/bbs/index.php?sid=a2c3ea40e52950b0a4c8409bd62cdaff
ログインには、会員・連携会員に郵送でお送りしたユーザー名とパスワードが必要です。

日本学術会議HP
http://www.scj.go.jp/index.html

--------------------------------------------------------------------------------
  
 以下、第210回~第211回幹事会の概要となります。

◎第210回幹事会(平成27年3月27日(金)13:30~17:05)
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 東日本大震災復興支援委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び小委員会委員
(1小委員会)を決定しました。
○新規設置
・東日本大震災復興支援委員会 原子力発電所事故に伴う健康影響評価と国民の健康管理
並びに医療のあり方検討分科会 原子力発電所事故被災住民の「二重の地位」を考える小
委員会
(2) フューチャー・アースの推進に関する委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)を
決定しました。
○新規設置
・フューチャー・アースの推進に関する委員会 持続可能な発展のための教育と人材育成
の推進分科会
(3) 学術振興の観点から国立大学の教育研究と国による支援のあり方を考える検討委員会
運営要綱の一部改正(庶務の変更)及び委員を決定しました。
(4) 第二部生命科学における公的研究資金のあり方検討分科会を設置することを決定しま
した。
(5) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置3件、所属委員会の追加1件、名称、審議
事項及び定数の変更1件、名称及び審議事項の変更1件、審議事項及び定数の変更1件)及
び委員会等委員(1委員会、15分科会、8小委員会)を決定しました。
〇新規設置
・地域研究委員会 地域学分科会 市民地域学課題検討小委員会
・地球惑星科学委員会 地球・惑星圏分科会 地球観測の将来構想に関する検討小委員会
・総合工学委員会 エネルギーと科学技術に関する分科会 エネルギーガバナンス小委員会
○所属委員会の追加
・経営学委員会・総合工学委員会合同 サービス学分科会
〇名称、審議事項及び定数の変更
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 工学システムに関する安全・安心・リスク検討
分科会 車の自動運転検討小委員会
○名称及び審議事項の変更
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 工学システムに関する安全・安心・リスク検討
分科会 安全目標の検討小委員会
○審議事項及び定数の変更
・総合工学委員会・機械工学委員会合同 工学システムに関する安全・安心・リスク検討
分科会 老朽および遺棄化学兵器の廃棄に係るリスク評価とリスク管理に関する検討小委
員会
(6) 提言「神宮外苑の環境と新国立競技場の調和に関する提言」について、環境学委員
会都市と自然と環境分科会の石川委員長より説明があり、審議の結果、保留としました。
(7) 平成27年度代表派遣実施計画の追加、変更及び会議派遣者を決定しました。
(8) フューチャー・アース5か国連携分散型国際本部事務局会合に連携会員を派遣するこ
とを決定しました。
(9) 第15回アジア学術会議年次会合(15th Science Council of Asia Conference)への
会員等の派遣及び外国人を招聘することを決定しました。
(10)「日本学術会議分野別委員会及び分科会等について」の一部を改正することを決定
しました。
(11)11件のシンポジウム等の開催及び6件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として、今後の幹事会の開催日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 東日本大震災復興支援委員会分科会における小委員会委員(1小委員会)を決定しま
した。
(2) 国際委員会における分科会委員(特任連携会員)(1分科会)を決定しました。
(3) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(10分科会)及び小委員会委員(
8小委員会)を決定しました。
特段の事情を考慮し、以下の分科会に、複数名の特任連携会員が任命されました。
・農学委員会・食料科学委員会合同 IUSS分科会
・農学委員会 土壌科学分科会
・農学委員会・食料科学委員会合同 PSA分科会
・臨床医学委員会 移植・再生医療分科会
・臨床医学委員会 手術データの全国登録と解析に関わる分科会
・数理科学委員会 数学教育分科会
(4) 国際業務に参画するための特任連携会員の任命を決定しました。
(5) 外部委員候補者を推薦することを決定しました。
6 非公開その他事項として、第169回総会の次第及び報告事項等について確認を行いま
した。また、科学と社会委員会年次報告等検討分科会の井野瀬委員長から第22期3年目の
外部評価について報告がありました。


◎第211回幹事会(平成27年4月9日(木)17:30~18:30)
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 提言「神宮外苑の環境と新国立競技場の調和に関する提言」について、大西会長よ
り、第210回幹事会での議論を踏まえた、その後の調整結果の説明があり、審議の結果、
承認しました。
(2) 科学研究における健全性の向上に関する検討委員会運営要綱の一部を改正し、同委員
会の設置期限を延長することを決定しました。
(3) 科学者委員会における分科会委員(1分科会)を決定しました。
(4) 分野別委員会における委員会委員(1委員会)を決定しました。
(5) 第5回世界工学会議(WECC2015:平成27年度共同主催国際会議)開催に当たり、クウ
ェート工学会 (KSE)及び日本工学会 (JFES)と協力に関わる確認書を締結することを決定
しました。
(6) 各地区会議代表者から各々の地区会議の活動について報告を受け、意見交換を行った
上で、平成27年度各地区会議事業計画を決定しました。
(7) 地区会議運営協議会委員の追加(1地区会議)を決定しました。
(8) 1件のシンポジウム等の開催及び1件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として、今後の幹事会の開催日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 外部委員候補者を推薦することを決定しました。