日本学術会議「幹事会だより No.122」について

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.122
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                                平成27年9月8日発行

                                  日本学術会議会長
                                      大西 隆

 今回は8月28日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを受
け、7月24日(金)に開催されました第216回幹事会の議事の概要を御報告いたします。


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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 7月と8月の幹事会の間に、各部の夏季部会が行われました。その様子については、『学
術の動向』9月号の「会長からのメッセージ」に書いたので、そちらをご覧いただきたい
と思います。夏季部会では、終了後に見学会が開かれるので、それに参加するのも楽しみ
です。今年は、北海道大学の研究・社会連携施設(第二部)、福島の原発事故被災地(第
一部)、そして高知県内の津波被害予防施設(第三部)を見せていただきました。私は、
国立大学の学長を本務としているので、北大の、特に産学連携の研究施設は、わが国の国
立大学としてはとても進んだ概念の施設として、羨ましくもあり、参考になりました。東
京電力福島第一原発では、避難指示の指定は免れたけれど、自主的に放射線量の測定を行
って、安全を管理しながら生活してきた伊達市小国地区から、避難指示区域内の飯館村を
通り、浜通りの被災地区を案内していただきました。家屋は一見普通に残っているもの
の、生活している人はいないため、ひっそりした佇まいは、事故の影響の大きさを改めて
実感させる光景でした。最後に、伺った高知県の海岸沿いの地域では、防波堤・防潮堤の
整備、津波避難タワーの整備が行われていました。南海トラフ地震津波が来れば、30メー
トルを超える恐れがあるということから、被害軽減のために様々な対策が既に行われてい
ることを知り、心強く感じるとともに、人的被害はもちろん、物的被害もできるだけ少な
いものとなればいいと思わずにはいられませんでした。特に、比較的平坦な地形が広がっ
ている地域もあり、東日本大震災で平地を襲った津波の映像を思い出すと、心配が募りま
す。加えて、南海トラフ地震では、地震動による被害も大きなものとされており、木造、
瓦葺の家屋が少なくなかったので、耐震補強も急務であると感じました。
 日本学術会議の第22期、第23期の活動は、自然災害の恐ろしさと、その被害を最小限に
するための科学技術の役割に力点を置いてきました。今夏の視察が契機となって、さらに
こうした分野での議論が深まる必要があると感じました。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
 8月の幹事会散会後の懇親会では、幹事会声明「これからの大学のあり方―特に教員養
成・人文社会科学系のあり方―に関する議論に寄せて」(平成27年7月23日)以降の動き
について、会長から報告がありました。幹事会声明公表の翌日から8月幹事会直前に至る
新聞記事や記者会見等、多様な場での「幹事会声明の余波」を俯瞰的に眺めてみると、幹
事会声明の反響は予想以上に大きく、そこに、我々が読み取るべきものもあると考えま
す。
 問題はこの次――どのくらいの期間で、どのような提言(あるいはそれ以上のもの)を
学術会議としてまとめるかです。これまで学術会議が「学術全体における人文・社会科学
の役割」に関してどのような意思を表明してきたかを踏まえつつ、既に設置されている関
連委員会又は分科会での議論を進めるとともに、その発信の仕方に知恵を絞りたいと思い
ます。新聞等で報道されているように、既に提出された国立大学の再編計画の中では、半
数近くの国立大学において人文・社会科学系学部の統廃合が進む予定とのことです。その
実態を把握しながら、我が国の学術の未来を見据えて、学術会議は何をどのタイミングで
発言すべきか、慎重に見定める必要があります。
 この間、それまで大学等の組織再編にさほど関心を示さなかった人文・社会科学系の学
協会でも、今回の動きを意識して、専門領域としてこの問題をどう捉えるかの議論を始め
た学協会もあると聞いております。学術会議はそうした動きとどのように連携すべきか、
これも大きな課題です。会員、連携会員の皆様、関連する情報をどうかお寄せください。
 また、同日には、幹事会構成員が委員を務める「科学研究における健全性の向上に関す
る検討委員会」(以下、「研究健全性検討委員会」)も開かれました。本年3月、文部科
学省科学技術・学術政策局長からの審議依頼に対し、学術会議が回答「科学研究における
健全性の向上について」をとりまとめ、手交したことは、4月の総会でも報告がありまし
た。その後、文部科学省では、ガイドラインの実施とともに、各研究機関での体制整備の
状況を把握するために、「公正な研究活動の推進に関する有識者会議」を立ち上げ、その
議論を踏まえて、現在、各大学等への履行状況調査が実施されています。独立行政法人日
本学術振興会(JSPS)では、研究倫理教育のためのeラーニング教材の作成に向け、準備
中とのことです。
 これまでの研究健全性検討委員会の議論では、例えばデータの保存期間ひとつとって
も、いや「データとは何か」についてさえ、専門によって考え方に大きな差があることが
指摘されてきました。データ保存やオーサーシップ等の問題に関して、現行のガイドライ
ンには、専門を跨ぐ包括的な感があります。それを、専門の差を意識したモデルへとブラ
ッシュアップしていくことも、全学問領域の科学者が集う学術会議ならではの仕事でしょ
う。そのためには、学協会とのさらなる連携が何よりも必要になります。これについて
も、関連する情報やご意見を寄せていただけますよう、お願い申し上げます。

〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
 学術会議では毎年7~8件程度の共同主催の国際会議を開催しています。今年度は8件が
予定されています。この7~8月には多様な分野の3会議が開催され、その開催地である名
古屋、京都、幕張に大西会長、井野瀬副会長と私が参加し、開会式で主催者としての挨拶
をしてきました。このうち、名古屋で開かれた国際第四紀学連合第19回大会には天皇皇后
両陛下のご臨席を賜りました。また、8月3日は、朝には京都で第17回世界経済史会議の開
会式が開かれ、午後3時には幕張で第9回国際中欧・東欧研究協議会世界大会の開会式が開
かれるというスケジュール上のコンフリクトがあり、綱渡りの移動を避けるために、井野
瀬副会長に京都での出席をお願いして、私は幕張の会議に参加しました。ところが、ふた
を開けてみると、福田康夫元総理が両方の学会の開会式に参加されていて、綱を難なく渡
っておられました。
 このような会議の開催に当たっては、学術会議が主催団体の一つに入っているとはい
え、実質的には主たる開催団体が企画を立て、それを数年間かけて準備されておられるわ
けです。開会式というのは、準備段階での多くのご苦労の成果が日の目を見る瞬間です。
開会式に参加すると、それぞれの主催者が様々な困難を乗り越えて、会議初日を迎えると
いう、緊張感と同時に、ある種の高揚感が直に伝わってきます。その高まる気持ちを主催
者として共有できることは得難い経験です。
 開会式の出席に加えて、基調講演を聞いたり、レセプションに出席させていただくこと
もあります。自分の本来の分野からすると一見遠いと思われる分野の学会に、自分自身と
共通の問題意識やアプローチを見いだすこともあり、一方で、自分がこれまで気にとめて
いなかった重要な課題を発見をすることもしばしばあります。
 例えば、8月に開催された、国際中欧・東欧研究協議会については、率直なところその
存在を工学出身の私は知りませんでした。しかし、この協議会に多数の研究者が世界中か
ら集まっていることを目の当たりにし、また開会式後に開かれた、日本、ロシア、韓国の
元首相級の方々の政治討論会などは、私にとっては、その企画そのものが大胆で、非常に
新鮮でした。
 さて、この共同主催国際会議は毎年秋に募集をしています。今年の秋には、2018年度に
開催する国際会議を対象とした募集を行いますので、ふさわしい会議があればふるって応
募いただきますよう、この場を借りてPRさせていただきます。



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 以下、第216回幹事会の概要となります。

◎第216回幹事会(平成27年7月24日(金)13:30~16:40)

1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) フューチャー・アースの推進に関する委員会における委員(1委員会)を決定しまし
た。
(2) 学術振興の観点から国立大学の教育研究と国による支援のあり方を考える検討委員会
における委員(1委員会)を決定しました。
(3) 学術研究推進のための研究資金制度のあり方に関する検討委員会における委員(1委
員会)を決定しました。
(4) 幹事会附置委員会「防災減災・災害復興に関する学術連携委員会」を新規に設置する
こととし、運営要綱を決定するとともに、委員(1委員会)を決定しました。
(5) 科学者委員会運営要綱の一部改正(廃止1件)を決定しました。
○廃止
・科学者委員会 組織運営等検討分科会
(6) 科学と社会委員会における分科会委員(1分科会)を決定しました。
(7) 国際委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び分科会委員(1分科会)を決定し
ました。
○新規設置
・国際委員会 持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2015分科会
(8) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び委員会等委員(1委員会、6分
科会)を決定しました。
〇新規設置
・総合工学委員会 エネルギーと科学技術に関する分科会 地球温暖化対応の視点からのエ
ネルギー対策・政策検討小委員会
(9) 農学委員会・食料科学委員会合同農業情報システム学分科会の地方開催を決定しまし
た。
(10)提言「科学者コミュニティにおける女性の参画を拡大する方策」について、科学者委
員会男女共同参画分科会の井野瀬委員長及び土井副委員長より説明があり、審議の結果、
所要の修正を行い、会長の確認を得ることを条件に承認しました。
(11)「関係機関等との意見交換会の実施について」を決定しました。
(12)日本学術会議協力学術研究団体の指定(23団体)を承認しました。
(13)14件のシンポジウム等の開催、2件の国際会議及び8件の国内会議の後援を決定しまし
た。
(14)日本学術会議の活動状況等に関する年次報告(平成26年10月~平成27年9月)の作成
の方針を了承しました。
3 その他事項として、第一部の小森田部長より、公開シンポジウム「日本と世界におけ
るジェンダー研究の発展にむけて」開催中止について報告がありました。また、第170回
総会及び今後の幹事会開催日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 定年により退任する会員の連携会員への就任を決定しました。
(2) フューチャー・アースの推進に関する委員会における委員(特任連携会員)(1委員
会)を決定しました。
(3) 国際委員会における分科会委員(特任連携会員)(1分科会)を決定しました。
(4) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(4分科会)及び小委員会委員(
5小委員会)を決定しました。
特段の事情を考慮し、以下の分科会に、複数名の特任連携会員が任命されました。
・基礎医学委員会 ICLAS分科会
・基礎医学委員会 病原体学分科会
(5) 日本学術会議栄誉会員の候補者を決定しました。
5 非公開その他事項として、大西会長及び第三部の相原部長から「第13回産学官連携功
労者表彰日本学術会議会長賞」の決定について報告がありました。


◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――― 

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  「第170回総会」 平成27年10月1日(木)~10月3日(土)
  「第171回総会」 平成28年4月14日(木)~4月16日(土)
  「第172回総会」 平成28年10月6日(木)~10月8日(土)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆◇