日本学術会議「幹事会だより No.125」について
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幹 事 会 だ よ り No.125
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平成27年12月11日発行
日本学術会議会長
大西 隆
今回は11月27日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを受
け、10月30日(金)に開催されました第220回幹事会の議事の概要を御報告いたします。
また、同幹事会において、第173回総会の日程が確認されました。会員の皆様におかれ
ましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。
◇◇今後の総会日程について◇◇
「第171回総会」 平成28年4月14日(木)~4月16日(土)
「第172回総会」 平成28年10月6日(木)~8日(土)
「第173回総会」 平成29年4月13日(木)~15日(土)※今回追加決定
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会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕
11月の初旬にハンガリー・ブダペストでワールド・サイエンス・フォーラム(WSF)が
開催されました。WSFは、ハンガリー科学アカデミーとICSU(世界科学会議)、UNESCO(
国連教育科学文化機関)が主催して2年に1回開催される会議で、1999年に、ブダペストで
科学者と社会との対話を進めるためのフォーラムが開催されたのを契機に、2003年から始
まったものです。当初は毎回ブダペストで開催されてきましたが、前回からハンガリーと
他の国で交互に開催することになり、2013年にブラジル・リオデジャネイロで開催され、
今回はまたブダペストに戻ってきました。科学技術関係の会議としては日本・京都で毎年
開催されているSTSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)と並ぶ
大きな会議です。特に、東欧で開催されることもあって、近隣諸国からの参加も多く、他
の国際会議とはやや異なる顔ぶれで、夕食会はかなりの盛況でした。全体のタイトルは
“Enabling Power of Science”(科学の有効性)で、様々なテーマに分かれて、議論
が行われました。私は、特に防災・減災をテーマとするセッションで報告する機会を得ま
した。このセッションは日本学術会議と英国王立協会(Royal Society)が運営を任され
ているものです。準備に当たってきた花木啓祐副会長、セッションの座長を務めた小池俊
雄東大教授とともに、アルゼンチン、米国、英国等からのスピーカーと議論をしました。
前述のように、WSFは、今でもよく引用されるブダペスト宣言を発した1999年の会議に
因んで開催されてきています。この会議の中で、「科学と科学的知識の利用のための世界
宣言」が採択され、科学の4つの側面、すなわち知識のための科学、平和のための科学、
開発のための科学、そして社会における科学と社会のための科学が示されました。特に、
科学者が自分達の狭いコミュニティーに閉じこもるのではなく、拡大している科学と社会
との関係を自覚して、科学の持つ社会的な役割や責任を果たしていくことが重要という概
念は、それまでも多くの科学者や社会から指摘されていたもので、改めて宣言という重み
を持って提起されました。それ以来、特に、社会のための科学という概念は科学者の自分
本位の科学至上主義を牽制するような形で定着してきたのではないかと思います。実は、
STSフォーラムも、フルネームは“Science and Technology in Society forum”であり、
科学者、産業人、政治家等の異なる立場の人が集って、科学技術の様々なテーマについて
語り合うことを目的にしています。まさに科学・技術が普及し、社会に定着してきた時代
における必要な対話の場を提供しているといえます。今回のWSFには、日本から、STSフォ
ーラムの尾身幸次議長も参加され、二つの国際フォーラムの触れ合いの機会にもなりまし
た。
〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
今回は、私が幹事を務める科学研究における健全性の向上に関する検討委員会(委員は
幹事会メンバーと同じ)のご報告です。第221回幹事会(11月27日)散会後に開催された
同委員会で、私は、今回初めてメンバーとして参加したICUS(国際科学会議)の3大委員
会の一つ、CFRS(科学研究における自由と責任に関する委員会)の会合(2015年10月1~2
日、於:パリ)の議論の一端を、戸惑いと驚きを含めてご紹介いたしました。
CFRSでは、“Freedom and Responsibility”という名称が示すように、科学者が行う研
究の自由とそれに伴う責任――前者と関わっては主に科学者(ないし研究団体)の人権、
後者については研究者(ないし研究団体)の倫理や責任――が、具体的な事案を通じて議
論されます。2日間の議論の中から、今回は以下の2つの事案をお話しいたしました。
一つは、2009年イタリア中部、ラクイラで起こった大地震に関連して、6人の科学者(
そして公務員1人)に対して下された懲役刑(2012年、求刑4年に対して6年の実刑判
決)をめぐるものです。この大地震は300人を超す死者を出しましたが、そこには、群発
地震が続く中で出された「安全宣言」から1週間足らずで地震が起こったことが大きく影
響していたと思われます。懲役6年という地裁判決は2014年に取り下げられましたが、
CFRSでは、上訴審を視野に入れて、科学的な予見や助言はどうあるべきか、その根拠と責
任をどう考えればいいのか等が議論されました。科学的助言に対する国民の「科学的リテ
ラシー」の問題にも言及されました。いずれも、3.11以降の日本の「科学と社会」をめぐ
る状況と無関係ではありません。
もう一つは、9.11以降の「テロとの戦い」の中で発覚した、容疑者・被疑者への「過酷
尋問(心理学的拷問)」とアメリカ心理学会(APA)との関係です。APAは当初、CIAや国
防総省、ホワイトハウスとの関わりを否定していたのですが、今年7月に出された542頁
に及ぶ調査報告書により、2001年以降、この問題にAPA所属の心理学者や幹部が関与して
いたことが(隠蔽工作を含めて)明らかにされ、アメリカ内外に大きなショックを与えま
した。現在APAは改革に着手しつつあるようですが、この事例の一つの論点は、科学者個
人(あるいはグループ)が行った研究とその(倫理を含む)責任のうち、何がどこまで、
所属する学協会や組織と不可分であるのかにあります。また、CIAや国防総省が、精神科
医ではなく心理学者にアクセスしやすかった背景として、APAの学会としてのガバナンス
も問われました。
日本の大学等研究機関では、今年4月1日から、文部科学省の新しいガイダンスに従った
不正行為防止体制が整備・実施されております。その多くでCITI JAPANのeラーニングが
義務化されていますし、日本学術振興会からも「科学の健全な発展のために―誠実な科学
者の心得―」(2015年)( https://www.jsps.go.jp/j-kousei/data/rinri.pdf )が出され
ました。11月半ばには、科学研究の健全性向上のための全国組織、「一般財団法人公正研
究推進協会」(APRIN)が設立され、活動を開始しつつあります。こうした日本における
取組みを、先に紹介したグローバルなコンテクストに置くとともに、学術会議ならではの
活動を具体的に模索する必要があると考えます。
第221回幹事会の翌週、12月1日には、BMB2015(第38回日本分子生物学会年会、第88回
日本生化学会大会 合同大会、於:神戸ポートピアホテル)の「研究倫理フォーラム」で
も、上記CFRSの報告をいたしました。STAP細胞事件への反省を踏まえて企画されたこのフ
ォーラムでは、つまるところ、こうした研究倫理の問題全体を俯瞰的に眺め、網羅的に捉
え、科学者コミュニティの自律・自浄作用を代弁するのは日本学術会議しかないのではな
いか、というフロアからの発言を複数いただきました。研究倫理教育の実質化に向けた具
体的な仕組み作りも、人文・社会科学を含むあらゆる研究領域を収める学術会議の仕事で
はないかという指摘も受けました。学術会議への期待は大きく、それ以上に、学術会議が
背負うべき宿題はもっと大きい。
学術会議は、様々な場で始まった科学研究の健全性向上の努力を結びつける存在であり
たい――そう強く思う2015年の初冬です。
〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
11月半ばは、さながらFuture Earth旬間でした。Future Earth(FE)にかかわる様々な
会議が東京と京都で行われました。「様々な会議」と書いたのは、科学者の会合、世界各
地域の人びとを集めた会合、関連する組織の人びとの会合、一般の人びととの交流を目指
した会合など、多くのものが含まれたからです。研究面では、FEはWCRP(気候変動国際協
同研究計画)、IGBP(地球圏-生物圏共同研究計画)、DIVERSITAS(生物多様性科学国際
共同研究計画)、IHDP(地球環境変化の人間的側面の研究計画)のように、気候、地球生
物圏、生物多様性、地球環境変化の人間的側面を明らかにする世界規模の研究プログラム
にルーツを持ち、新たなFEでは、学術と社会との関係を強めて地球の問題の解決に取り組
もうとしています。運営組織面では、科学者の委員会(Science Committee, SC)に加え
て、FEで鍵となるステークホルダーとの研究企画・実施・成果還元の協働を推進する関与
委員会(Engagement Committee, EC)、FEの全体の方向と重要事項を決定する評議会
(Governing Council, GC)が設けられています。これらの活動を支えていく組織とし
て、5ヶ国が日常的に連携を取りながら運営する、ネットワーク型の国際合同事務局が設
けられ、日本もその一翼を担い、「日本ハブ」を設置しています。この日本ハブは、日本
学術会議が東京大学サステイナビリティ学連携研究機構と共同して運営しています。また
世界の5地域に地域事務局が置かれ、京都の総合地球環境学研究所がアジア地域の事務局
を担っています。
今回は、東京において、国際合同事務局が運営する形で、11月16-18日にSC、 EC、22-
23日にGCが開かれました。それに加えて、京都においては、アジア地域事務局が中心とな
ってアジア委員会の会合が開かれました。これらの内容については、詳細で多岐にわたり
ますのでここでは省略しますが、事務局、SC、ECからの共同コミュニケが会議直後に発出
されました。
また、この期間に、FEの運営に関する会議とは別に、FEが重要と考える、様々なステー
クホルダーとの交流を目指してシンポジウムなどを開催しました。11月14日(土)に日本
科学未来館でサイエンスアゴラ2015の一環として開いた「Future Earth セッション」を
皮切りに、15日(日)午前には、FEに発展的に引き継がれるIGBPの日本での活動を総括す
るシンポジウム、同日午後には、毎年日本学術会議が主催している「持続可能な社会のた
めの科学と技術に関する国際会議」としてFEを取り上げた公開シンポジウムを実施しまし
た。また、19日(木)には京都において、「南からの視点」と題して開発途上国の持続可
能性に焦点を当てたアジア地域ワークショップを開き、さらに21日(土)にはサステイナ
ビリティ・サイエンス・コンソーシアムと共催する形で東京大学においてシンポジウムを
開きました。これらの行事は、その内容、主たる対象者にバリエーションを持たせてお
り、様々なステークホルダーを巻き込もうという意図で行われたものです。
今回の一連のFE行事に対しては春日文子先生を事務局長とする国際合同事務局日本ハ
ブ、総合地球環境学研究所が運営するアジア地域事務所の献身的な努力がありました。
FEは巨大なプロジェクトで、始動にも時間がかかりますが、少しずつ動き始めました。
Knowledge Action Network(KAN)という新たなプロジェクト群もスタートしつつありま
す。皆様には、それぞれの立場からのご支援を引き続きお願いしたいと思います。
●参考ウェブサイト:
http://www.chikyu.ac.jp/future_earth/index.html
http://www.futureearth.org/
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SCJ Member Forum (会員・連携会員専用掲示板)
http://www.scjbbs.go.jp/bbs/index.php?sid=a2c3ea40e52950b0a4c8409bd62cdaff
ログインには、会員・連携会員に郵送でお送りしたユーザー名とパスワードが必要です。
日本学術会議HP
http://www.scj.go.jp/index.html
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以下、第220回幹事会の概要となります。
◎第220回幹事会(平成27年10月30日(金)13:35~16:05)
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 特任連携会員の推薦権者の整理に伴い、「日本学術会議の運営に関する内規」の一部
を改正するとともに、特任連携会員の推薦に係る諸規程の改正を行うことを決定しまし
た。
(2) 国際委員会運営要綱の一部改正(新規設置3件)及び小分科会委員(4小分科会)を決
定しました。
〇新規設置
・国際委員会 Gサイエンス及びICSU等分科会 Gサイエンス学術会議 (2016)「脳と心」
執筆対応小分科会
・国際委員会 Gサイエンス及びICSU等分科会 Gサイエンス学術会議(2016)「防災」執筆
対応小分科会
・国際委員会 Gサイエンス及びICSU等分科会 Gサイエンス学術会議(2016)「科学者育
成」執筆対応小分科会
(3) 第三部「科学技術の光と影を生活者との対話から明らかにする」分科会を設置するこ
とを決定しました。
(4) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び委員会等委員(2委員会、4分
科会、2小委員会)を決定しました。
〇新規設置
・経営学委員会 地域経営学の研究・教育のあり方検討分科会
(5) 第2回各国若手アカデミー会議(2nd Worldwide Meeting of Young Academies)に連
携会員を派遣することを決定しました。
(6) スリランカで開催されるSCA役員会議、第16回SCA大会(スリランカ)開催準備及び第
18回SCA大会(バングラデシュ)事前調査に会員を派遣するとともに、SCA役員会議に外国
人を招聘することを決定しました。
(7) 日本学術会議協力学術研究団体の指定(10団体)を承認しました。
(8) 地区会議運営協議会委員の追加を決定しました。
(9) 8件のシンポジウム等の開催、1件の国際会議及び5件の国内会議の後援を決定しまし
た。
3 その他事項として、今後の幹事会の開催日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 補欠の会員(合計3名)の候補者を推薦する部をそれぞれ第三部とすることを決定し
ました。
(2) 補欠の連携会員候補者を決定しました。
(3) 国際委員会における小分科会委員(特任連携会員)(2分科会)を決定しました。
(4) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(1分科会)及び小委員会委員(4
小委員会)を決定しました。
特段の事情を考慮し、電気電子工学委員会URSI分科会に、複数名の特任連携会員が任命さ
れました。
(5) 東日本大震災復興支援委員会における委員(特任連携会員)(2分科会)を決定しま
した。
(6) 科学技術を生かした防災・減災政策の国際的展開に関する検討委員会における委員
(特任連携会員)(1委員会)を決定しました。
(7) IAP(IAP for Science) 執行役員選挙に日本学術会議が立候補することを決定しまし
た。
(8) 日本学術会議連携会員の辞職の承認を同意しました。
◇◆◇次回の総会日程について(再掲)◇◆◇――――――――――――――――――
次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。
「第171回総会」 平成28年4月14日(木)~4月16日(土)
「第172回総会」 平成28年10月6日(木)~10月8日(土)
「第173回総会」 平成29年4月13日(木)~15日(土)※今回追加決定
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