日本学術会議「幹事会だより No.126」について

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.126
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                                平成27年12月28日発行
                                   日本学術会議会長
                                       大西 隆

 今回は12月18日(金)に開催されました幹事会で、議事要旨が確認されましたことを受
け、11月27日(金)に開催されました第221回幹事会並びにメール審議により開催されま
した第222回幹事会の議事の概要を御報告いたします。


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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕 
 今年最後の幹事会が12月18日に開催されました。この幹事会では、筑波大学医学医療系
の高橋智先生をお招きし、12月上旬に、NAS(全米科学アカデミー)とNAM(全米医学アカ
デミー)、RS(英国王立協会)、CAS(中国科学院)の主催で開催された「ヒトゲノム編
集に関する国際会議」(International Summit on Human Gene Editing)について御報告
いただきました。このサミットは、ヒトゲノム編集に関して各国専門家が意見交換して、
共通して賛同できる当面の方針をまとめようという目的で開催されたものです。誘いが急
であったために、日本学術会議として正式な代表団を組むには至らず、高橋先生の多大な
ご協力を得て、高橋先生に御参加いただいたものです。
 高橋先生からの御報告によると、このサミットは、(1)ヒト生殖細胞に対するゲノム編
集については、試験管内での培養実験は別として、条件が満たされるまで原則的に禁止
し、(2)ヒト体細胞に対するゲノム編集については、推進する必要があるという、2つの狙
いがあったということです。
 そして、以下の3点が合意事項となりました。
1.ヒト体細胞ゲノム編集の臨床試験は、現状の遺伝子治療の規制の枠組みの中で進めるこ
とができる。
2.ヒト生殖細胞ゲノム編集は、様々な問題点が解決されるまで、特別な条件下での基礎研
究を除き、行うべきではない。
3.ヒト生殖細胞ゲノム編集の国際的な規制の枠組みについては、今後、様々な地域、人々
から広範な意見の聴取を行うべきである。
 今後、これらの合意事項をめぐって、各国の研究者や学会における議論が進んでいくと
考えられます。特に、iPS細胞の治療への応用においてもゲノム編集技術が有効性を持つ
と考えられるので、日本でもヒト生殖細胞のゲノム編集に関する制限を明確にしつつ、ゲ
ノム編集技術の開拓を進めていく必要があるというのが専門家の見解のようです。日本学
術会議としても、関係学会、さらにはアジア地域の研究者との討論を広げていく必要があ
ると考え、この分野の会員が中心となって進めていくつもりです。
 今年は、日本学術会議にとって、「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」の
報告によって、ここ10年の活動を評価していただいた上で、種々の改善の提案を受けて、
今後の進むべき道がより明確になったこと、大学改革など、わが国学術研究活動の中心機
関の今後のあり方について、大きな議論を始めることができたことなど、2016年以降の活
動に繋がる重要な1年であったと思います。皆様、良い年をお迎え下さい。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
 先月に引き続き、今月も、幹事会散会後に「科学研究における健全性の向上に関する検
討委員会」(委員は幹事会メンバーと同じ)が開催されましたので、御報告いたします。
 今回の話題提供はお二人。お一人目は、文部科学省からの研究不正行為防止のガイドラ
インに関する審議依頼に対する回答「科学研究における健全性の向上について」(平成27
年3月6日日本学術会議)( http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-k150306.pdf
)をまとめるに際して、小林良彰先生(第22期学術会議副会長)と共に中心的な役割を果
たされた家泰弘先生(第22期学術会議副会長)です。今年4月1日から全国の大学・研究所
等で施行されているガイドラインを含めて、研究の自由を守るための研究者の責任とし
て、この問題をめぐる日本の現状を俯瞰的にお話しいただきました。家先生が理事を務め
る独立行政法人日本学術振興会では、平成27年3月に研究倫理教育教材「科学の健全な発
展のために-誠実な科学者の心得-」( https://www.jsps.go.jp/j-kousei/data/rinri.pdf
)をまとめ、現在は、平成27年度内の公表を目指し、そのe-learning教材を製作中とのこ
とで、多くの研究機関で倫理教育の一環として使用されているCITIのe-learningとの関係
も話題になりました。
 もうお一人は、第二部幹事の福田裕穂先生(東京大学大学院理学系研究科長・理学部長
)です。福田先生からは、東京大学生命科学系で進行中の研究不正ガイドラインの見直し
作業、分けても専門領域によって認識が大きく異なる「データ保存」についての話を伺い
ました。学術会議の回答を含めて、現在各大学で施行中のガイドラインは、専門横断的な
もの、言い換えれば、研究不正行為について最低限のルールを決めたに過ぎません。今
後、福田先生の報告にあった東京大学のように、各大学がそれぞれの現状に即して、それ
ぞれにガイドラインを検証する作業が進むと思われます。それこそ、科学研究の健全性向
上のために必要なことでしょう。そのとき学術会議は何をすべきか。今年8月に文部科学
省が全国の大学等に行った調査結果がまとまる(平成28年2月頃)のを受けて、学術会議
ならではの課題を明確化せねばなりません。
 もう一つ、去る12月20日(日)、第4次男女共同参画基本計画が年内に閣議決定されるこ
とを受けて企画・開催された日本学術会議主催学術フォーラム「日本の戦略としての学術
・科学技術における男女共同参画-『第4次男女共同参画基本計画』との関わりで-」に
ついて、短く報告させていただきます。
 学術・科学技術の分野を含み、各分野で活躍する女性の割合について「2020年までに30
%」という数値目標が決められたのは、今からちょうど10年前の2005年12月に策定された
第2次男女共同参画基本計画においてでした。以来10年間、各分野における女性の数は微
増しつつも、日本社会全体としては男女共同参画の進捗状況が低空飛行にあることは、世
界経済フォーラムが毎年発表しているGGGI(グローバル・ジェンダー・ギャップ指数)が物
語っています。男女共同参画分科会メンバーによる3本の報告では、このまま何もしない
で「微増状態」に任せるだけなら、目標値達成に50年ほどかかること、今や「学力」の問
題の多くは女子ではなく男子にあり、だからこそジェンダーを意識した統計整備が急がれ
ること、そうしたデータに基づく議論を通じて国民世論の形成が求められていること等々
が説得的に示され、聴衆の強い関心を引きつけました。
 グローバル化の中でますます重要となる多様性を確保し、未来を拓くイノベーションを
可視化するために、男女共同参画(gender equality)は、今の日本にとって「must」の戦
略です。今こそ、科学的に性差(ジェンダー・ギャップ)を議論せねばなりません。そし
て、ジェンダー・サイエンスの議論でも学術会議が先頭に立たたねば――そう思う年の瀬
です。
 皆様、今年は様々な場で大変お世話になりました。心から御礼申し上げます。ありがと
うございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
 毎年恒例となっているアジア学術会議(SCA)国際シンポジウムの第16回SCA会合が、コ
ロンボ(スリランカ)で開催されます。期日は2016年5月31日から6月1日です。アブスト
ラクトの申込締切が1月10日となっています。皆様にはふるって応募いただくよう、お願
いいたします。
 http://www.scj.go.jp/en/sca/pdf/16th_1st_circular.pdf
 http://www.scj.go.jp/en/sca/index.html
 アジア学術会議は、事務局が日本学術会議に置かれており、現在、第三部の吉野博先生
が事務局長をお務めになっています。日本学術会議が要を務めつつも、会長はアジア各国
のアカデミーが務め、毎年アジア各国でシンポジウムを開催しています。今回の第16回
SCA会合は、現在SCAの会長である、スリランカのVijaya Kumar先生(スリランカ科学アカ
デミー会長)のお膝元での開催となります。
 2015年はカンボジアのシェムリアップで第15回SCA会合を開催し、世界遺産であるアン
コールワットを目指して各国から訪れる観光客の急激な増加と地元の施設・環境・生活の
間のギャップをどのように埋めていくか、ということが大きな課題でありました。第16回
SCA会合は、「Science for the People: Mobilizing Modern Technologies for
Sustainable Development in Asia」というテーマ設定がされています。バイオ、IT、ナ
ノ、再生可能エネルギーなどの技術を国の開発にどうつなげていくか、これらの技術がも
たらす社会的な側面、伝統的な文化の保全の問題を考え、また気候変動に対する緩和・適
応策、持続可能な構築環境、防災などがサブテーマとしてあげられています。間口は広い
ながらも、技術と社会の間の関係を議論していく事を目指しています。
 このシンポジウムとはまったく別ですが、現在、第三部で、「科学技術の光と影」につ
いて議論を進めようとしており、問題意識には相通ずるものがあります。
 しかし、このような議論を実りあるものにするためには、様々な分野からの発表が行わ
れることが必要です。その意味でも、是非皆様の応募をお待ちしております。


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SCJ Member Forum (会員・連携会員専用掲示板)
http://www.scjbbs.go.jp/bbs/index.php?sid=a2c3ea40e52950b0a4c8409bd62cdaff
ログインには、会員・連携会員に郵送でお送りしたユーザー名とパスワードが必要です。

日本学術会議HP
http://www.scj.go.jp/index.html

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 以下、第221回~第222回幹事会の概要となります。

◎第221回幹事会(平成27年11月27日(金)14:00~16:10)
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 「委員会及び分科会等に係る特任連携会員の選考の在り方について」の一部を改正す
ることを決定しました。
(2) 「日本学術会議の行う国際学術交流事業の実施に関する内規」の一部を改正すること
を決定しました。
(3) 「日本学術会議主催学術フォーラムの選定及び実施について」の一部を改正すること
を決定しました。
(4) 国際委員会における分科会委員(1分科会)を決定しました。
(5) 分野別委員会運営要綱の一部改正(新規設置2件)及び委員会等委員(6分科会、1小
委員会)を決定しました。
〇新規設置
・心理学・教育学委員会 市民性の涵養という観点から高校の社会科教育の在り方を考え
る分科会
・政治学委員会 比較政治分科会 グローバル・地方再生人材育成小委員会
(6) 科学者に関する国際人権問題委員会における委員会等委員(1委員会、1分科会)を決
定しました。
(7) 平成27年度代表派遣について、実施計画に基づく1-3月期の会議派遣者を決定しまし
た。
(8) 国際測地学及び地球物理学連合(IUGG)の規約改正に伴い信任状の発出することを決
定しました。
(9) 5件のシンポジウム等の開催、2件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として、若手アカデミーがOur Common Future Under Climate Change
(CFCC)15 の声明に賛同したことについて報告が行われました。また、今後の総会・幹事
会の開催日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 国際委員会における小分科会委員(特任連携会員)を決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(12分科会)及び小委員会委員
(2小委員会)を決定しました。
特段の事情を考慮し、以下の分科会に、複数名の特任連携会員が任命されました。
・言語・文学委員会 科学と日本語分科会
・農学委員会・食料科学委員会合同 農学分野における名古屋議定書関連検討分科会
・食料科学委員会 水産学分科会
・地球惑星科学委員会 IUGG分科会
・情報学委員会 国際サイエンスデータ分科会
・情報学委員会 情報科学技術教育分科会
(3) 若手アカデミー構成員(特任連携会員)を決定しました。
(4) 日本学術会議連携会員の辞職を承認することを同意しました。


◎第222回幹事会(平成27年12月16日(水))
(会則第26条による幹事会における議決方法の特例により、メール審議を行いました)

公開審議事項
1 シンポジウム等
提案1 日本学術会議主催学術フォーラム「少子化・国際化の中の大学改革」を開催する
こと

提案1について原案のとおり承認しました。


◇◆◇次回の総会日程について◇◆◇――――――――――――――――――――――

次回以降の総会について、以下日程で開催が予定されております。
  会員の皆様におかれましては、ご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

  「第171回総会」 平成28年4月14日(木)~4月16日(土)
  「第172回総会」 平成28年10月6日(木)~10月8日(土)
  「第173回総会」 平成29年4月13日(木)~15日(土)

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