日本学術会議「幹事会だより No.139」について

 

 

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幹 事 会 だ よ り No.139
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                           平成29年2月10日発行
                              日本学術会議会長
                                  大西 隆

 今回は1月27日(金)に開催された幹事会で、議事要旨が確認されましたことを受け、
昨年12月16日(金)に開催された第239回幹事会及び1月6日(金)にメール審議として
開催された第240回幹事会の議事概要を御報告いたします。

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  会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕
 会員・連携会員の皆様は、24期からの会員・連携会員の推薦を終えたことと思い
ます。推薦を通じて、将来の日本学術会議のあり方、特に次代を担う科学者・研究
者に思いを馳せたことと推察します。日本学術会議は、科学者の代表とされます。
このことは、日本学術会議法第2条の「・・わが国の科学者の内外に対する代表機関
・・」という一節から由来して、日本学術会議の説明によく使われます。それでは、
誰を代表しているのでしょうか?これもよく使われるのは、84万人の科学者の代表
というものです。この84万人というのは、総務省が毎年行う科学技術研究調査の研
究者(大学卒又はそれと同等以上の専門的知識を有する者で、特定の研究テーマを
持って研究を行っている者)に該当する数で、2016年3月時点で84.7万人であり、
ここ数年84万人前後を上下しているといえます。定義からすれば、博士課程の学生
は含まれるし、修士課程でも研究を始めていれば含まれることになります。しかし
、最も多くの研究者を擁しているのは企業部門で48.6万人であり、大学部門等は32
.2万人です。
 ところが、ご承知のように、日本学術会議の会員・連携会員の多くは大学等の教
育・研究機関に属しているので、84万人の研究者を的確に代表しているとはいえな
いことになります。また、大学等についても、研究本務者(所属の組織で研究を主
とする者)では、私立大学の方がやや人数が多いのに、会員・連携会員には国立大
学勤務者が多いといった不均衡があります。コ・オプテーションでは、現在の構成
が踏襲されやすいので、目標を設定して、意識的に不均衡を是正していく努力が必
要と思います。既に推薦は終わったので、これからの選考過程で、各選考分科会、
選考委員会の役割は大きなものがあります。もちろん、これからの選考では、女性
比率の30%目標達成、地域間の不均衡是正、さらに若手アカデミーの担い手確保な
ど多くのテーマに挑戦することが求められます。是非いい選考を行いたいと思いま
す。
 2月初めには、講堂で、「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」と題す
る学術フォーラムが開催されました。約300人の参加者があり、このテーマへの社
会的関心の高さを窺わせました。このフォーラムは、「安全保障と学術に関する検
討委員会」(杉田敦委員長)が中心となって開催したものですが、同検討委員会は
、中間的まとめとこのフォーラムを経て、最終的なまとめに入ることになります。

〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
  2015年9月に国連が採択したSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能
な開発目標)をめぐり、日本でもようやく、幅広い議論が取り上げられるようにな
ってきました。学術会議講堂でも関連するシンポジウムが開かれました(花木副会
長報告参照)が、その翌週の2月1日にも情報システム研究機構(ROIS)でSDGsと
深く関わるワークショップが開かれ、参加してまいりました。
 SDGsでは、「誰も置き去りにしない(“no one left behind”)」という基本理念
のもとに置かれた17の目標が、それぞれに達成されることもさることながら、その
組み合わせが各目標到達の実効性を高める効果も期待されています。今回のワーク
ショップでは、目標5に掲げられた「ジェンダー平等の実現」の視点からSDGs全体
を見通すことがテーマとなっていました。ジェンダー平等という目標と他の16の目
標との相互関係を考え、ジェンダー平等が達成されると他の目標がどうなるかを考
える試み、といえます。その分析には、人工知能と言語学を組み合わせた自然言語
処理(natural language processing、NLP)を用いた「目標相互の関連性」の分析
(SDGs Policy Builder, <http://sdgs.bmlab.org/>)や、他の目標との相乗効果を
「プラス3段階、マイナス3段階、プラス・マイナスゼロ」の7段階で測る評価方
法などが使われています。
(M.Nilsson, D.Griggs and M.Visbeck, Nature, vol.534, pp.320-322, 16 June 2016)
 これらの方法を用いた分析結果によれば、ジェンダー平等達成との相互関係がさ
ほど明確でないのは、目標7(エネルギー関係)、目標9(産業と技術革新関係)、
目標12(つくる責任・つかう責任関係)、目標14(漁獲等の海の資源関係)、目標
15(森林等の陸の資源関係)などとのこと。もちろん、これらの目標と関わる領
域――たとえば、上記すべてと関わる産業界――では、ジェンダー平等の実現を
めざす取組みもすでに実施されていると聞きます。それでも、システマティック
な分析方法でSDGs相互の関係を考えることは、それぞれの目標に別の見方を与え
てくれるとともに、目標相互の「対話」の入口にもなると考えます。
 なお、「目標5(ジェンダー平等達成)」に注目することで見えてくるSDGs実現
の新たな捉え方については、本年5月25日~26日に行われるジェンダーサミット
10(GS10、@一橋講堂)で報告される予定です。会員、連携会員の皆様、日本科学
技術振興機構(JST)主催、学術会議共催で行われるGS10に多くのご参加をお願い
申し上げます。

〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
  去る2017年1月27日、日本学術会議講堂において、「持続可能な開発目標(SDGs)
の達成に向けた超学際研究とマルチステークホルダー協働の推進-持続可能な社会
のための科学と技術に関する国際会議2016」が開催され、さまざまな立場の方が多
数参加しました。学術会議では、「持続可能社会のための科学と技術に関する国際
会議(通称「持続会議」)」を、いわゆるシリーズものの会議として2003年以来毎
年開催しています。2003年12月に開催された第1回の持続会議のテーマはエネルギ
ーと持続可能な社会で、それ以来「持続可能な社会のための科学」という共通キー
ワードに焦点を当てながら、さまざまな課題を取り上げてきました。私自身は第2
回の2004年に、当時副会長の岸輝之先生からお声がけをいただき、アジアの巨大都
市、というテーマでの企画に関わりました。第3回以降、社会科学的なテーマ、技
術的なテーマ、福祉に関するテーマなどを取り上げてきましたが、今回は「持続可
能社会」そのものにストレートに関係させ、持続可能な開発目標(SDGs)をテーマと
して取り上げたわけです。そのSDGsの達成のために、超学際研究とマルチステーク
ホルダー協働の推進という切り口から議論したのが今回の会議で、もともと環境学
委員会からの提案で始まったものです。SDGsは非常に多くの項目を含み、17のゴー
ルと169のターゲットから構成されています。日本政府としてもSDGsへの取り組み
には力を入れていて、総理を本部長とするSDGs推進本部が2016年に設置され、同年
12月には政府としての「SDGs実施指針」が策定されました。しかし、実際に取り組
むにはSDGsは「多すぎる」、「わかりにくい」というのが率直な印象です。今回の
会議においても、わかりにくいSDGsをどのように広めていけば良いか、そのために
それぞれのステークホルダーがお互いにどう対話をすれば良いのか、という点が議
論されました。今回の会議の内容については、学術の動向などで紹介される機会も
あると思いますので、関心がある方は是非そちらをご覧下さい。
 今年度はもう一つ別の「持続会議」を3月の初めに計画しております。こちらに
ついても、近々紹介させていただきたいと思います。

 
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  以下、第239回及び第240回幹事会の概要となります。

◎第239回幹事会(平成28年12月16日(金)13:30~16:00)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 分野別委員会における委員会等委員(追加7件)を決定しました。
(2) 提言「神宮外苑の歴史を踏まえた新国立競技場整備への提言―台地に根差した
本物の杜の実現のために―」について、環境学委員会都市と自然と環境分科会石川
委員長より説明があり、審議の結果、所要の修正を行うことを条件に承認しました。
(3) 提言「高等学校新設科目「公共」にむけて―政治学からの提言―」について、
政治学委員会河田委員長及び羽場副委員長より説明があり、審議の結果、所要の修
正を行うことを条件に承認しました。
(4) 「国際コデザインワークショップ:持続可能な開発目標(SDGs)のための地球
観測-アジアの都市」の共催及び外国人の招聘について決定しました。
(5) 「Future Earth Urban Knowledge Action Network Scoping Workshops 2017」
の共催及び外国人の招聘について決定しました。
(6) 「地理空間に関するSDGsに対応した意思決定支援システム」及び「都市をより
レジリエントに:ハビタットIIIその後」国際会議等に連携会員を派遣することを決
定しました。
(7) 平成28年度第4四半期における学術フォーラム及び土日祝日に講堂を使用する
シンポジウム等につき決定しました。(1件のシンポジウム等)
(8) 平成29年度第1四半期における学術フォーラム及び土日祝日に講堂を使用する
シンポジウム等につき決定しました。(4件のシンポジウム等)
(9) 9件のシンポジウム等の開催、1件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として大西会長から今後の幹事会日程について確認が行われました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(2分科会)及び小委員会
委員(1小委員会)を決定しました。

◎第240回幹事会(平成29年1月6日(金))
(会則第26条による幹事会における議決方法の特例により、メール審議を行いました)
公開審議事項
1.シンポジウム等
  提案1 公開シンポジウム「家族とジェンダーをめぐる法律(案)・政策がはらむ
諸問題」
  提案1について原案のとおり承認されました。