日本学術会議「幹事会だより No.142」について
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幹 事 会 だ よ り No.142
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平成29年5月19日発行
日本学術会議会長
大西 隆
今回は4月13日(木)及び4月26日(金)に開催された幹事会で、各前回議事要旨が
確認されましたことを受け、3月24日(金)に開催された第243回幹事会及び4月13日
(木)総会中に開催された第244回幹事会の議事概要を御報告いたします。
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会長・副会長より
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〔 会長 大西隆 〕
今期も残り半年を切り、期末期首の継続性に関する問い合わせを頂戴するようになり
ました。言うまでもなく、日本学術会議の仕組みでは、期首の総会で、会長、各部の部
長が互選によって決まり、全体の体制が整っていきます。さらに、副会長や部の役員が
指名承認されることによって、機能別委員会、さらには各部に属する分野別委員会も動
き出すことになります。問い合わせで多いのは、分科会や課題別委員会の活動がどうな
るのか、また、今期中にとりまとめを行う予定の提言や報告に基づいた学術フォーラム
やシンポジウム(シンポジウム等)の開催を来期になってから行うことはできないかと
いうものです。
まず、課題別委員会等の臨時の委員会とされるものは、期末でいったん解散し、必要
に応じて来期再発足します。名称が同一でも、新規設置になるので、来期幹事会での審
議の上で、発足することになります。また分科会以下のすべての組織は常置ではないの
で、いったん終了して、再設置になります。必要性を見極めるという観点から、少し検
討時間がかかることも考えられます。したがって、今期からの申し送りは行うものの、
設置や委員構成の判断は来期幹事会などの担当事項です。
一方で、今期中にまとめた提言や報告をもとに、来期発表や議論のためのシンポジウ
ムなどを行おうとする場合、実質的な開催母体となる委員会や分科会が無くなってしま
うという不都合が生じる恐れがあります。そこで、今期中に提言等をまとめた分科会等
については、希望があれば、今期において、シンポジウム等の企画を今期幹事会に提案
していただきたいと思います。幹事会としてそれを認める場合には、来期幹事会に、母
体となる組織を、シンポジウム開催のためという目的限定で継続的に設置することを申
し送ることが適当かと思っています。こうすることで、期末で途切れることなく継続し
て、シンポジウムなどを開催することができます。
期が変わることは、役員が変わることであり、新たな方針の下で、今後の事業を行う
節目となります。新体制が、少し時間をとって、方針を決定することは重要です。ただ
、日本学術会議の活動の継続性も重要なので、今期中にまとめた提言等の発表や委員会
等の外部メンバーとの討議の機会(シンポジウム等における)については、円滑に確保
されるようにしたいと考えています。この件について、事務局とも意思の疎通を図って
いきますので、該当する委員会等の責任者の皆さんは、事務局担当者と連絡を取りなが
ら進めるようにして下さい。
〔 政府・社会・国民との関係担当副会長 井野瀬久美惠 〕
総会の翌週、4月20日、21日の二日間に渡り、パリのICSU(国際科学会議)本部で
CFRS(科学者の自由と責任に関する委員会)の定期会合が行われました。その初日、私
は学術会議が決議した「軍事的安全保障研究に関する声明」を追加議題として提案し、
委員全員の賛同を得て、二日目の議題とすることが承認されました。
3月幹事会で決議され、4月総会で報告、意見交換がなされた「軍事的安全保障研究
に関する声明」は、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」で可視化された軍事研
究が「学問の自由」と緊張関係にあることを問題視し、科学研究に携わる個人と組織の
倫理・責任のありようを改めて問いかけました。それは、今回CFRSの議題として、国際
光学評議会(International Commission for Optics)から出された
「国防組織との協賛をめぐる倫理的な問題」の問い合わせとも重なります。われわれの
目の前で起こっている軍事と学術の接近は、日本に特殊な現象ではけっしてなく、形を
変えて世界各地で起こり、科学者に「自由と責任」の所在と意味を問いかけているので
す。
すでに「幹事会だより」でも紹介してきたように、CFRSは、世界各地で起こっている
科学者・研究者に対する人権侵害の事例をいくつもとりあげ、その解決をめざして議論
を続けてきました。アメリカやヨーロッパ諸国の研究機関から一時帰国した研究者の拘
束・拘留が続くイラン。国民投票の結果を受けて大統領権限の強化が現実化しつつある
なかで、何が正確な情報なのか、ますます不明瞭になっている感のあるトルコ。留学先
のケンブリッジ大学から研究調査に向かったエジプトで殺されたイタリア人院生をめぐ
るエジプト政府と大学当局、双方の対応に対する不信。研究成果の公開に先立ち、政府
に事前許可を求める通達を出したロシア。ハンガリー出身のアメリカ投資家ジョージ
・ソロスが共同出資する「ヨーロッパ中央大学」の閉鎖を決議したハンガリー議会―
―CFRSはこれらのすべての関係者に事実照会を依頼するのですが、何度督促しても返信
すらないことも少なくありません。今回は、アメリカ新大統領によるイスラム圏7か国
からの入国禁止令も議題のひとつだったのですが、これもしばらくは様子見するしかな
いでしょう。CFRSにできることには限界がある・・・。
そのあたりの見直しを含めて(でしょうか)、今回のCFRSでは、ICSUの一大原則であ
る「科学の普遍性(Universality of Science)」の問い直しが議題のひとつとなってい
ました。ALLEA(ALL European Academies)会長Pieter J.D.Drenthの講演
「科学的価値――どれくらい普遍的か?
(“Scientific Value: How Universal?”,
presented at the International Symposium on Universal Values,
May 26-28, 2004)」
に立ち戻って考え直そうとの提案です。「学問の自由と責任」を今なお深く考えさせる
講演内容なのですが、偶然にもパリに来ていたトルコ・アカデミー関係者との意見交換
が議題に割り込み、この問題自体を十分に議論することはできませんでした。次回に持
ち越しです。
同じ理由で、学術会議声明の議論も、私の説明には十分な時間をいただけたものの、
議論には時間足らずの感が否めませんでした。それでも、防衛装備庁の研究推進制度予
算の増大状況(2015年度は3億円、2016年度は6億円、2017年度は110億円)を示しただ
けで、CFRSメンバーからは大きなため息が漏れました。とりわけ深いため息を発したの
は、キャンパスへのイスラエル軍突入に抵抗するエルサレムのアル・クッズ大学教授か
らだったように思います。日本で起こっていることは、形こそ違えど、世界各地で起こ
っている・・・。
内政干渉とならない範囲で各国の科学者の自由と責任にどう関わるかは、とても難し
い問題です。CFRSが事実照会段階で暗礁に乗り上げることが多いのも、しかたのないこ
とかもしれません。それでも、この委員会の議題となり、記録されて国際社会に知られ
ることには、それなりの意味があると感じています。特に今回はそう思いました。それ
は、一日目の会議終了後、懇親会が終わる時刻に、ICSU本部近くのシャンゼリゼ通りで
警官一人が射殺される事件があり、閉鎖直前に飛び乗ったメトロの中で、心細い思いを
しながら、平和と暴力の境界線をしみじみ考えたから、だけではありません。二日目の
会議終了後、CFRSメンバーとの会話が、翌4月22日にワシントンを中心に計画されてい
た「科学のためのデモ行進(March for Science)」への参加をめぐるものだったから、
でもあります。アメリカ新政権による科学への介入、学問の自由が脅かされることへの
懸念・・・。
「軍事的安全保障研究に関する声明」を決議した学術会議の今後をさまざまに考える
昨今です。
〔 国際活動担当副会長 花木啓祐 〕
今期も残すところが5ヶ月弱になりました。それぞれの分野別委員会、課題別委員会
では今期の活動のとりまとめ、次期の方針などを議論されているところだと思います。
国際関係の活動につきましては、23期から24期へという日本学術会議の期の更新、それ
と半年ずれて生じる会計年度の更新を考えつつも、日本だけのカレンダーで決められな
い他国との交流を中心にして事に当たっています。来期に行われる行事であっても今期
に決めないと間に合わないもの、来期に担当される方々のお考えを待つもの、などさま
ざまです。
来期に入って早々に行われる国際行事としてはICSUの定時総会とそれと並行して開催
されるISSCの臨時総会があり、本年10月下旬に台北で行われます。これらの総会で、
ICSUとISSCの統合についての最終投票が行われるため、新会長および国際担当の新副会
長に参加していただきたいと考えています。10月初めの総会までこれらの役職の方々が
決まらないのですが、なんとか都合をつけていただけることを願っております。
IAPについては、さまざまな活動が行われており、期の切れ目に関係なく、その都度
対応を行っています。
11月にはヨルダンで世界科学フォーラム(WSF)が開かれます。これについては、日本
学術会議もセッションを企画する事を具体的に検討しており、そのセッションの専門家
は今期中に決めておく必要があります。
毎年行っている「持続会議」については、現在今年度の企画を検討中で、おそらく今
期中に企画を固め、来期に実行する事になると思います。
毎年アジア各地で開催しているアジア学術会議(SCA)は、今年は6月にマニラで開催し
ます。来年はバングラデシュで開催する事が決まっており、その準備が既に始まってい
ます。また、新規加盟国の開拓をめざして、継続的に未加盟の国を訪問する活動を継続
中です。
イタリアで開催された2017年のGサイエンス学術会議については来月の幹事会だより
でご報告する予定です。2018年については、カナダで開かれる見込みですが、実質的に
始まるのは10月以降なので、来期の方々に委ねる予定です。
フューチャー・アースは休みなく動き続けており、学術会議の期の切れ目が活動の停
滞につながらないよう、気を配る必要があります。
それぞれの専門分野における国際交流も、学術会議の期や日本の年度と関係なく進め
ていただいている事と存じます。皆様のご尽力に感謝し、ご協力を改めてお願いする次
第です。
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SCJ Member Forum (会員・連携会員専用掲示板)
http://www.scjbbs.go.jp/bbs/index.php?sid=a2c3ea40e52950b0a4c8409bd62cdaff
ログインには、会員・連携会員に郵送でお送りしたユーザー名とパスワードが必要です。
日本学術会議HP
http://www.scj.go.jp/index.html
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以下、第243回幹事会及び第244回幹事会の概要となります。
◎第243回幹事会(平成29年3月24日(金)13:30~17:30)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 「日本学術会議主催学術フォーラムの選定及び実施について」の一部を次のよ
うに改正することを決定しました。
(2) 分野別委員会における委員会・分科会(追加2件)及び小委員会委員(新規1
件)を決定しました。
(3) 声明「軍事的安全保障研究に関する声明」を日本学術会議会則第2条第2号の
「声明」として取り扱うことを幹事会として審議・決定しました。同声明の決定を
次回総会の議案とすることについては取り下げられた。
※別紙において詳細があります。HPを御参照下さい。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf23/giji243.pdf
(4) 報告「わが国の経営学大学院教育のあり方について~高度専門職業人教育を中
心にして~」について、経営学委員会経営学大学院教育のあり方検討分科会の鈴木
委員長及び高橋委員より説明があり、審議の結果、所要の修正を行うことを条件に
承認しました。
(5) 提言「21世紀の博物館・美術館のあるべき姿―博物館法の改正へ向けて」につ
いて、史学委員会博物館・美術館等の組織運営に関する分科会の小佐野委員長及び
秋山幹事より説明があり、審議の結果、所要の修正を行うことを条件に承認しまし
た。
(6) 日本学術会議協力学術研究団体を指定することについて決定しました。
(7) 平成29年度第2四半期における学術フォーラム及び土日祝日に講堂を使用する
シンポジウム等につき決定しました。(8件のシンポジウム等)
(8) 平成29年度第1四半期における学術フォーラム及び土日祝日に講堂を使用する
シンポジウム等につき追加で決定しました。(1件のシンポジウム等)
(9) 4件のシンポジウム等の開催、3件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として、報告(案)「軍事的安全保障研究について」について杉田第
一部長からの審議経過報告及び大西会長から今後の幹事会日程について確認が行わ
れました。
4 以下の非公開審議が行われました。
(1) 補欠の会員候補者について選定することと、その補欠の会員の所属部について
決定することについて総会に提案することを決定しました。
(2) 分野別委員会における特任連携会員(1件)及び小委員会委員(1小委員会)
を決定しました。
(3) 外部委員候補を推薦することを決定しました。
(4) 日本学術会議連携会員の辞職の承認を同意することを決定しました。
◎第244回幹事会(平成29年4月13日(木)17:30~18:30)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 各地区会議代表者から各々の地区会議の活動について報告を受け、意見交換を
行った上で、平成29年度各地区会議事業計画を決定しました。
(2) 補欠の連携会員の選任の要望を承認し、推薦を行う部を第一部に決定しました。
(3) 報告「軍事的安全保障研究について」について、安全保障と学術に関する検討
委員会の杉田委員長及び大政副委員長より説明があり、審議の結果、承認しました。
(4) Gサイエンス学術会議2017共同声明のイタリア首脳への手交式を含むG7サイエ
ンス・カンファレンスに会員を派遣することを決定しました。
(5) 3件のシンポジウム等の開催、1件の国内会議の後援を決定しました。
3 その他事項として、今後の幹事会及び総会の開催日程について確認が行われま
した。