日本学術会議「幹事会だより No.148」について
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幹 事 会 だ よ り No.148
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平成29年11月21日発行
日本学術会議会長
山極 壽
期首のため発行が遅れてしまいましたが、第23期に引き続き第24期においても幹事
会だよりを発行し、会員、連携会員の皆様への情報発信を行いたいと考えております。
第24期における第1回目となる今回は、新四役からのご挨拶及び10月3日(火)、4日
(水)及び30日(月)に開催された第254回~第256回幹事会の議事概要を御報告いたしま
す。
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会長・副会長より
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〔 会長 山極壽一 〕
第24期の日本学術会議の活動を開始しました。新会長として私が最初に臨んだのが、
10月14日に横浜市で開催された第58回日本肺癌学会学術集会です。共催団体として挨拶
をさせていただき、出席された皇太子殿下や日本肺癌学会の淺村尚生会長をはじめ関係
者の皆さんと懇談いたしました。これからこういう機会が増えるのだろうと実感させら
れました。
会長に選任されることを予期していなかったので、すでに大学の総長や国立大学協会
の会長としての予定が詰まっており、なかなか副会長や幹事会の皆さんと直接会って話
し合う機会が作れないでおります。日本学術会議の事務局にもなかなか足を運べません。
そのため、メール連絡網を駆使しながら、新しい活動計画を練っているところです。第
23期に日本学術会議が発出した提言は91もあります。これらはこの3年間の会員や連
携会員の皆さんの熱意の表れであると同時に、日本学術会議の役割、とりわけ政府や社
会へ向けて科学者として責任を果たそうという強い意志の反映であると思います。まず
は、これらの提言がどのような効果を生み出し、国の政策や社会の発展に貢献したか、
する見込みがあるか、を検証し、現状を踏まえてさらなる議論を継続しなければなりま
せん。
日本学術会議は内閣府に属しており、政府に対して科学的な観点からさまざまな勧告、
要望、声明、提言、報告をすることが期待されるとともに、わが国が直面する多くの課
題に科学の立場から取り組み、政府や社会からの要請に応えていかねばなりません。会
長は毎週内閣府で開かれる総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に出席すること
が要請されています。現在2018年の骨太の方針をにらんで研究力の向上や大学改革を推
進するための議論が活発に行われており、私もいろいろと意見を申し上げています。科
学技術に関する各省庁の政策が次々に議論されるので、それらの書類にいちいち目を通
さねばならず、目が回りそうな忙しさです。
様々な議論に参加し、日本がさまざまな意味で大きな転換期にさしかかっていること
を痛感しました。今こそ日本学術会議が果たすべき役割とは何か、時代の趨勢を見極め
つつ正しい道を選択していかねばなりません。それにはまず、社会の人々との対話に加
え、国内の科学者コミュニティとこれまで以上に活発な対話を通じて、密接な連携を構
築していかねばなりません。その上で、数々の国際会議を通じて世界の科学者との連携
を図り、国を超えて人々の調和ある共存と社会の発展を目指すべく科学の役割を強化し
ていかねばなりません。世界や社会の情勢が急速に動く中、山積する課題に迅速に対応
しつつ、しかし科学の持つ普遍性と高潔な理想を揺るがすことなく、日本の科学の推進
と貢献に努めていこうと思います。会員と連携会員のみなさまの積極的なご参加を切に
お願いいたします。
〔 組織運営及び科学者間の連携担当副会長 三成美保 〕
このたび、日本学術会議第24期副会長に任命された第一部会員の三成美保と申します。
組織運営担当の副会長というたいへん大きな役目をいただき、身が引き締まる思いです。
わたくしの専門は、ジェンダー法学とジェンダー史です。歴史と比較をふまえて、ジェ
ンダー視点から家族や女性、性的マイノリティ(LGBT/LGBTI)、マスキュリニティ(男
性性)について研究をすすめてまいりました。近年では、「市民性涵養」のための法学
教育・歴史教育をいかに構築するかについて強い関心をもっております。ジェンダー研
究は、1990年代末以降、日本でも多くの専門学会ができはじめた新しい学際的学問領域
です。ジェンダー研究が専門分野として発展することはもとより、すべての学問領域で
ジェンダー視点が貫徹することを期待してやみません。ジェンダー視点とは、学術や社
会におけるジェンダー・バイアス(ジェンダーにもとづく偏りや偏見)を発見し、ジェ
ンダー平等の実現に向けて解決策を展望する視点であり、いずれの学問にも不可欠の視
点だと考えるからです。
日本学術会議では、会員選出方法が現行制度に変わった2005年(第20期)から9年間連
携会員をつとめ、第23期から会員として活動しております。2016年10月からは1年間、第
一部副部長として幹事会にも参加し、多くのことを学ばせていただきました。これらの
経験を副会長としての職務にも反映したいと考えております。とくに次の3つに重点的
に取り組む所存です。
第1は、担当である科学者委員会の機能を拡充することです。科学者委員会の役割は、
科学者コミュニティ内のさまざまな問題を審議することです。日本学術会議は、特定の
利害に与することなく、科学者としての良心にしたがって議論するところにその存在意
義があります。その議論は、歴史をふまえ、国際社会に目配りし、人類や地球の未来を
見据えたものであろうと志すがゆえに、現状に対する批判的検証を伴います。科学者委
員会及び附置分科会では、多様な意見を尊重し、わかりやすい言葉でていねいな説明を
心がける誠実・真摯・寛容な言論空間を作り、成果をシンポジウムや提言等の形で国内
外にお示ししたいと考えております。
第2は、女性活躍を推進することです。女性研究者のあり方は、1990年代後半以降、
大きく変わりました。多くの大学が女性研究者の採用に積極的になり、大学役員や学会
理事への登用も増えました。しかし、まだ十分とは言えません。助教など任期付き雇用
の多くは若手女性研究者ですし、大学や研究機関、学協会の意思決定過程に関与する女
性比率はけっして高いとは言えないからです。日本学術会議は率先して女性会員比率を
高めようと努力してきました。現在、会員の32%が女性です。女性会員比率が高まった
ことで、たとえば23期には、男女共同参画、ジェンダー、ワークライフバランス、少子
高齢化など、女性の生活経験に根ざしたテーマがしばしば取り上げられました。しかし、
日本社会はジェンダー平等にはほど遠い現状です。政府の男女共同参画白書にも取り上
げられる世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数の2017年版によ
れば、日本の総合順位は144ヶ国中114位(政治123位、経済114位、健康1位、教育74位)
でした。日本学術会議が女性比率の高さを活かして日本の学術や社会に根深いジェン
ダー・バイアスに切り込んでこそ、広く政治や経済、地域社会での女性活躍を促す方途
が見いだせると信じております。
第3は、次世代を担う若手研究者の活躍を支援することです。日本学術会議には、45
歳未満の会員あるいは連携会員から構成される若手アカデミーという組織があります。
昨今、研究資金が競争的資金へと大きくシフトし、若手研究者が疲弊し、使い捨てにさ
れる危惧が大きくなっています。科学・学術が成果主義に陥っているという構造的な危
機のなかで、もっとも大きな被害を受けているのが若手研究者です。彼らのニーズを適
切に反映した支援策を若手アカデミーとともに考えたいと思っています。
以上の3つの課題は、一人で成し遂げることができるものではありません。会長、他
の二人の副会長との連携協力はもとより、学術会議の会員・連携会員の皆さまの幅広い
ご協力が不可欠です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
〔 政府、社会及び国民等との関係担当副会長 渡辺美代子 〕
日本学術会議第24期の副会長として「科学と社会」を担当することになりました。
超多忙な山極会長を3人の副会長で支えるために、担当分野に厳密にこだわることなく、
お互い助け合いながら4人のチームワークで科学をめぐる課題に果敢に取り組みたいと
考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
11月はじめに、学術会議副会長として運営委員を務めている世界科学フォーラム
(World Science Forum: WSF)に参加してきました。このフォーラムは世界の科学政策
を中心に議論する国際会議で、1999年のブタペスト宣言を受けて2003年から隔
年で開催されています。今回の第8回は11月7日から10日にかけて、ヨルダンの死
海のほとりで、ヨルダン王立科学会が主催、ハンガリー科学アカデミー、UNESCO、国際
科学会議(ICSU)など8機関が共催し、ヨルダンのスマヤ王女が議長となって「平和の
ための科学」をテーマに開かれました。120カ国・地域から3,000人の代表者が
集まり、エネルギー、水、食糧、気候変動、貧困と不平等の緩和、すべての社会におけ
る富と機会の創造、そして民族間の文化的理解について議論しました。
会期中に開かれたWSF運営委員会でヨルダン「平和のための科学」宣言が検討され、
11月10日に公表されました。このヨルダン宣言は、すべての人に平等、安全、機会
を約束する未来を築くため、科学が公正で持続可能な開発においてますます重要な役割
を果たすよう、科学と社会に関係するすべての人に対して行動を起こすことを呼びかけ
るものです。「平和」とは「紛争がない状態」以上の価値を指すものであり、「人々に
恐怖がなく健康的な生活を保障するもの」と定義しました。そして、以下の五つを宣言
しました。1)公正かつ持続可能な天然資源の管理は、紛争を回避し、平和な世界の発
展を促進するために不可欠である、2)世界的に難民が増えることによって人々の科学
的な問題解決能力の保持が脅かされているが、その保持こそが平和、持続可能な発展、
困難から立ち直る力および社会の回復への鍵である、3)多様性は科学技術とイノベー
ションの質を決める鍵であり、その成果を広い範囲に影響をもたらすために不可欠であ
る、4)私たちは科学の普遍的な自由と責任が実現されることを約束する、5)私たち
はアラブ地域科学フォーラムの立ち上げを支援する。
周辺地域では紛争が繰り広げられ難民が流入している環境において、誰よりも真剣に
平和を望み維持しているヨルダンの人々とそれを支える人々が、平和のための科学を追
求するための国際会議を開催し、力強くヨルダン宣言で平和のための科学を訴えました。
これは、世界にとって意義深いことです。平和は維持できるものだと多くの国民が信じ
ているわが国も、この宣言を真摯に受け止め、共有することが必要であると考えます。
世界平和に貢献するために私たち日本の科学者は何ができるのかを、考えさせられる会
議でした。
〔 国際活動担当副会長 武内和彦 〕
山極壽一会長のご指名により第24期の国際活動担当副会長に就任いたしました。東京
大学や国連大学での私の国際経験・人脈を活かしながら、日本学術会議の国際展開に微
力を尽くす所存ですので、会員、連携会員、事務局の皆様の温かいご支援を心よりお願
いいたします。
国際活動担当副会長に就任して驚いたことは、就任後ただちにいくつかの国際会議へ
の出席を求められたことでした。年内は私自身のスケジュールがほぼ固まっており、渡
辺美代子副会長に出席をお願いした国際会議もありますが、日本学術会議が加盟する
International Council for Science (ICSU)とInternational Social Science Council
(ISSC)の合同総会には、スケジュールを調整して10月26日の最終日だけ参加しました。
この日は、両組織の統合の是非や統合された新組織の名称に関して投票が行われまし
たが、統合は圧倒的多数で可決され、名称は、International Science Council (ISC)と
なりました。期せずして、世界の学術界再編の歴史的瞬間に立ち会えたことになります。
続いて統合後初の総会の開催地に立候補したパリと福岡のプレゼンテーションの機会が
与えられ、私は九州大学副学長の宮本一夫先生とともに福岡をアピールしました。統合
後初の総会は残念ながら投票でパリに決まりましたが、ICSU、ISSCの両会長からは、20
18年秋に福岡での開催が決定しているWorld Social Science Forum 2018(WSSF2018)を統
合後初のISCの大きな行事として盛り上げたいとの期待が寄せられました。
人文・社会科学、生命科学、理学・工学の3部にまたがる日本学術会議は、統合される
ISCのいわばロールモデルとなりうるものであり、その発展に大きく貢献することが期待
されています。私も、国際活動担当副会長として、統合後初の実質的な議論が始まるこ
の福岡での国際会議の成功に向けて尽力したいと考えています。
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SCJ Member Forum (会員・連携会員専用掲示板)
http://www.scjbbs.go.jp/bbs/index.php?sid=a2c3ea40e52950b0a4c8409bd62cdaff
ログインには、会員・連携会員に郵送でお送りしたユーザー名とパスワードが必要です。
日本学術会議HP
http://www.scj.go.jp/index.html
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以下、第254回、第255回及び第256回幹事会の概要となります。
◎第254回幹事会(平成29年10月3日(火)17:00~17:30)
1 第24期における第1回目の幹事会のため、出席した各幹事会委員からご挨拶があり
ました。
2 前回議事要旨の確認が行われました。
3 以下の公開審議が行われました。
(1) 分野別委員会における委員会委員(30委員会)を決定しました。
(2) 今後の予定(幹事会及び連携会員説明会日程)について検討を行いました。
(3) 第23期からの引継ぎ事項について、武内副会長から説明があり、内容を確認しまし
た。
◎第255回幹事会(平成29年10月4日(水)13:30~13:50)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 国際委員会における運営要綱の一部改正(新規設置1件)及び分科会委員(新規1件)
を決定しました。
(2) 幹事会附置委員会の設置(新規設置4件)及び委員会委員(新規1件)を決定しまし
た。
○新規設置及び委員会委員決定
・ICSU及びISSC合併後の新組織設立総会の招致に関する検討委員会
○新規設置
・広報委員会
・外部評価対応委員会
・移転検討委員会
(3) 分野別委員会における運営要綱の一部改正(新規設置24件)及び分科会委員(新規
24件)を決定しました。
(4) 課題別委員会の設置(新規設置1件)及び委員会委員(新規1件)を決定しました。
○新規設置及び委員会委員決定
・防災減災・災害復興に関する学術連携委員会
(5) 平成29年度代表派遣について、会議の追加及び派遣者の決定をすることを承認しま
した。
3 以下の非公開審議が行われました。
(1) 国際業務に参画するための特任連携会員の任命の決定を承認しました。
(2) 外部委員候補の推薦について承認しました。
◎第256回幹事会(平成29年10月30日(月)13:30~15:45)
審議事項等
1 前回議事要旨の確認が行われました。
2 以下の公開審議が行われました。
(1) 「日本学術会議分野別委員会及び分科会等について」の一部改正について決定しまし
た。
(2) 幹事会附置委員会の委員会委員(新規3件)を決定しました。
(3) 機能別委員会における運営要綱の一部改正(新規設置1件)、委員会委員(新規4件)
及び分科会委員(新規1件)を決定しました。
○新規設置及び分科会委員決定
・ゲノム編集技術と社会に関する検討分科会
○委員会委員の決定
・選考委員会
・科学者委員会
・科学と社会委員会
・国際委員会
(4) 分野別委員会合同分科会の新規設置(4件)を決定しました。
(5) 分野別委員会における運営要綱の一部改正(新規設置131件、委員構成の変更2
件)、委員会委員及び分科会委員(新規22件、追加11件)を決定しました。
(6) 課題別委員会の設置(新規設置3件)及び委員会委員(新規2件、追加1件)を決定
しました。
○新規設置及び委員会委員決定
・科学技術を生かした防災・減災政策の国際的展開に関する検討委員会
・医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方検討委員会
○新規設置
・フューチャー・アースの推進と連携に関する委員会
○委員会委員決定
・防災減災・災害復興に関する学術連携委員会
(7) 平成29年度代表派遣について、実施計画の一部を変更することを承認しました。
3 以下の非公開審議が行われました。
(1) 科学と社会委員会における分科会委員(特任連携会員)(1分科会)を決定しました。
(2) 分野別委員会における分科会委員(特任連携会員)(1分科会)を決定しました。
(3) 課題別委員会における委員会委員(特任連携会員)(2委員会)を決定しました。