新型コロナウイルス感染症に関する声明
2020年5月29日
日本微生物学連盟
1.2019年12月に中国で最初に患者が確認された新型コロナウイルス感染症は、短期間のうちに世界中に拡がり、人々の健康・生命のみならず社会システムそのものにも大きな影響を与えつつある。日本微生物学連盟にはわが国の微生物学関連23学術団体が加盟している。そのうち、ウイルスや感染症を扱う学会が中心となり、これまで新型コロナウイルス感染症の予防・治療・基礎及び臨床研究などの対応を進めてきた。今後も、われわれは微生物や感染症の専門家集団として、新型コロナウイルスを含む微生物によって引き起こされる感染症に関する知見を深化させることを通して、社会に貢献するための努力を惜しまない。
2.環境破壊による野生動物との接触機会の増加やグローバル化の進行などが今回の新型コロナウイルス感染症出現の大きな要因と考えられる。したがって、今後も新たな病原体の出現、パンデミックが予想される。その危険性を最小限に抑えるためには基礎的な学術研究、例えば環境中での(潜在的)病原体の生態、それらの変異およびヒトへの感染のメカニズムの解明、診断法や新規治療薬の開発、さらに人間社会における感染症の拡がりを抑えるための具体的方策などの研究が必要である。われわれは環境中を含め幅広く微生物を研究しており、今後も国内外の関係学会、研究機関と協力してこれらの課題に取り組んでいく。
3.ウイルスを含む微生物や感染症について、国民の知識が深まることは、今回のようなパンデミックにあたり、科学的根拠に基づく施策決定や社会の対応を円滑にすることに加え、感染症に対する誤解や過度の不安を防ぐためにも役立つ。本連盟が作成に協力した提言「我が国における微生物・病原体に関するリテラシー教育」が日本学術会議から昨年既に出されているが、初等中等教育の教科書において、微生物についての記述を、早急に、体系的に増やすとともに、内容の理解度を高めるような教育方法の開発を強く提案する。
新型コロナウイルス感染症に関する声明(PDF)