日本学術会議の役割と第25期新規会員任命について(声明)

 

  1. 2020年10月26日
    日本微生物学連盟
    常務理事会


     新型コロナウイルス感染症が発生して以来、我が国においても、医療関係者とともに、感染症に関わる多くの研究者が、この感染症の克服に向けて、日夜、全力で研究を進めている。日本における微生物に関連する23学術団体の連合体である日本微生物学連盟も、本年5月「新型コロナウイルス感染症に関する声明」を公表し、加盟学会の様々な専門性を踏まえて課題の克服に貢献する決意を表明するとともに、学校教育における微生物教育の重視について訴えた。新型コロナウイルス感染症は、環境破壊による野生動物と人間との接触機会の増加、そして人間の社会活動と人的交流のグローバル化とスピード化の複合的な結果として、引き起こされたものであり、今後も新たな病原体により同様のパンデミックが起こる可能性がある。このように複雑かつ地球規模の危機の背景と影響を理解し、適切な対策の提言を行うには、生命科学、理工学だけでなく、人文社会科学を含む多様な専門家が協力して知恵を出し合うことが必須である*。

     日本微生物学連盟は、平成19(2007)年の発足以来、加盟する多くの学術団体とともに、日本学術会議の協力学術研究団体として同会議と連携しつつ活動している。これまで、日本学術会議の微生物に関する諸分科会を通じて、国民の生命、我が国の国益、そして全世界の人類の健康と福祉を守るため、様々な提言の作成に協力してきた**。新型コロナウイルス感染症拡大の状況にあって、学術の重要性はますます強まっている。上述のように、多くの科学分野の英知と協力が必要であることに加え、科学的エビデンスを中立、公正に国民に提供することが必要である。そのために、人文社会科学、生命科学、理工学を網羅するという、世界でも特異的な構成を持ち、政府から独立、中立の特別の機関として機能してきた日本学術会議の存在意義は、大変大きい。このような日本学術会議の精神と会員選考を含む体制における独立性は保たれるべきである。

     

    以上を踏まえ、微生物に関連する学術団体の連合体である日本微生物学連盟の常務理事会は、

    ○日本の人文社会科学、生命科学、理工学の学術界全体を国内外に代表する組織として、日本学術会議は大きな役割を果たしていると認めます。

    ○日本国民の生命と利益、ひいては全世界の人類の健康と福祉を守るために、日本学術会議は今後も独立して中立、公正に活動することが重要だと考えます。

    ○第25期日本学術会議が第181回総会で決議した要望書「第25期新規会員任命に関する要望書」を支持します。

     

    補足説明
    *例えば、新型コロナウイルス感染症についても、ウイルス学だけではなく、感染症学、環境中の微生物の生態学、農芸化学などの知見、微生物に関する学校での教育の重視など、日本微生物学連盟が関わる多くの専門性や活動が、総合的に関わっている。

    **報告「科学・技術のデュアルユース問題に関する検討報告」 (2012年11月)、提言「病原体研究に関するデュアルユース問題」(2014年1月)、提言「我が国のバイオセーフティレベル4(BSL-4)施設の必要性について」(2014年3月)、提言「我が国における微生物・病原体に関するリテラシー教育」(2019年5月)、提言「感染症の予防と制御を目指した常置組織の創設について」(2020年7月)など




    日本学術会議の役割と第25期新規会員任命について(声明)[PDFファイル]